先日、ケミカルメーカーの調達担当をしている古い知り合いと話してきました。

 

彼はもともと国際物流業界で働いており、その経験を買われてメーカーの調達担当として数年前に転職したという経緯があります。

 

かつて物流会社の営業担当だった彼は当然我々の業界の市場動向にも詳しく、細かい説明抜きで状況を把握してくれる一方、その場しのぎの場当たり的な言い訳が通用しない厳しさも持ち合わせているのでした。

 

 

彼の会社は世界的なメーカーですが、日本での事業規模では特に物流専門の部署を必要とすることなく、発注から輸入手配、保管や出荷などを彼が一貫して管理しています。

 

コロナ禍もあり久々の対面での世間話タイムでしたが、この2年の輸送混乱と市場高騰に話題が及んだ時、彼は、

 

「運賃の上昇なんてそれほど大きな問題ではない」

 

と言いました。

 

 

彼の会社はヨーロッパから化学原料を多く輸入しています。

 

考えてみれば1コンテナあたりに積まれている貨物の価格全体を考えると、キログラム当たり数ユーロの化学原料でも、コンテナ1本あたりその価格は数百万円~数千万円にも至ります。

 

一時は1本あたり数千ドルに高騰したコンテナ運賃も、仕入れに関わるトータルコストから考えるとそのごく一部でしかありません。

 

それよりも、ウクライナ情勢をはじめとする政情不安による燃料や加工費など原料価格そのものに関わるコスト上昇の積み重ねや為替の乱高下などのほうが、調達全体を考えればよほどインパクトは大きいとのことでした。

 

 

荷主が大手であれば物流専門の担当が窓口に立って折衝にあたるため、我々物流業者は、ついつい運賃こそが荷主にとって最も重要であると考えがちです。

 

運賃は安いにこしたことはありません。

 

それでも、ウェブ見積もりが普及し、だれでも簡単に安価な運賃が入手できるようになってくる今だからこそ、輸送の安定化や可視化、市場動向の先見性など、輸送のプロとしての知見を活かした付加価値の提供が我々にとって重要なファクターになってくるのではないかと思ったのでした。


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