船社からオンラインでの見積もりを勧められることが多くなってきました。

 

MAERSKCMA-CGM, MSC, HAPAG-LLOYDのような大手グローバル船社から最近ではKMTCのようなローカル船社まで。

 

 

船社によってサービス範囲には差がありますが、スポットでの運賃見積もりからスペース確認、ブッキングやBL発行まで素早くシームレスに行える環境が整っており、我々フォワーダーや荷主にとっても非常に利便性が高く業務効率の向上にも役立ちます。

 

船社としても見積もり対応からブッキング以降の事務処理までの作業の省力化が見込めることもあり、積極的にオンライン化を推進しています。

 

船社によっては、従来のようなマニュアルでのブッキングやBL発行に対して高いチャージを設定している場合もあります。

 

コロナ下での在宅勤務体制も相まって、業務を効率的に進めるためには非常に有効な手段であることは間違いありません。

 

 

ただ筆者はフォワーダーとしてこの船社によるオンライン化推進に一抹の不安を抱えつつあります。

 

 

船社がグローバルレベルでオンライン化を推進するということは、船社が儲けるためと言っても過言ではありません(まあ企業なので当然ですが)

 

そしてそこには人的資源の削減や業務効率化によるコスト圧縮以上の大きな狙いがあると筆者は考えています。

 

 

昨今の事情を考えると、以前にもまして船社の空きスペースは「金の生る木」です。

 

この空きスペースを効率的に埋めて収益を最大化することが船社の至上命題と言えます。

 

 

船社の積んでいる貨物にも様々な契約形態のものがあります。

 

自動車や電機メーカーとの長期契約に基づいたBCOの貨物や、フォワーダーが主導するNAC案件などは、季節変動も含めたボリュームの推移をある程度目論むことができ、収益予測を立てることも可能です。

 

それら以外のいわゆるFAKと言われる貨物やスポット案件などはボリュームを読むことも難しく、効率的に空きスペースを埋めることは困難だったに違いありません。

 

特に日本では輸入過多という事情もあり、空コンテナを積み地に戻すのも一苦労。

 

2021年統計では輸出コンテナ900TEU のうち 330TEU 以上が空コンテナ)

 

他船社のスペース状況や運賃レベルも不透明な中で過剰に安価な運賃を提示することも少なくなかったことが想像できます。

 

しかし船社見積りのDX化が進行すると、マーケット水準の透明化が進み、売り手主導で空きスペースをより効率的に埋めていくことが可能になることでしょう。

 

利便性を売りにしながら、船社にとって空きスペースを最も効率的に、高い収益性を保ちつつ、販売機会を最大にすることができるからです。

 

 

我々フォワーダーにとって、様々な船社との関係性を維持し、情報収集をすることで価格競争力以上のサービス品質を顧客に提供することは重要な課題でした。

 

荷主からの見積もり依頼に対して、船社ごとのサービス航路の違いや、積み地や揚げ地のコンテナ事情などを考慮し、様々な選択肢の中から提案を作成することがセールスマンの重要なスキルだったのです。

 

 

荷主さんがいくつかの船社のオンラインブッキングを使いこなすようになってしまったら、今までフォワーダーが果たしてきた役割の重要性は減少してしまうかもしれません。

 

筆者の感じる「一抹の不安」は、まさにこの部分です。

 

 

今後、フォワーダーは、旧来のCY-CYの運賃差額のみに依存する収益構造を見直す必要が急務になってきそうですね。


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