2022年も7月に入り、夏本番の様相を呈してきました。
ウクライナ情勢は終息が見えず、原油価格も2月末以降上下動を繰り返しながら高値張付きのまま、さらに数十年ぶりの円安ということでドル建て運賃を購買する日本荷主にとっては厳しい材料ばかりです。
上海ロックダウンは中国貿易にとって大変大きなインパクトでしたが新型コロナウイルスによる行動制限は緩和の方向を向いており、夏フェスや大物アーティストの日本公演決定のニュースなどが見られるようになってきました。
3年前の日常が戻りつつあるのか、単なる規制疲れが大義名分として認められるようになってきたのか。
感染者数がやや上昇傾向なのは気がかりではありますが・・・・
上海ロックダウン解除の振り戻しも思ったほど大きくはなく、運賃市場やスペース状況はゆったりと緩和に向かっている印象です。
筆者は以前より、コンテナ市場の方向性はアジア(中国)から北米向けの市場にけん引されると考えていますが、今後はどのような推移をたどるのでしょうか。
世界のコンテナ市場においてアジア~北米間航路の占める輸送量の割合はおよそ16%を占めます。
(日本海事センター掲載 世界のコンテナ荷動き量の推移(IHSデータ)より)
さらに、アジアから北米西岸へはおよそ2週間という短いトランジットタイムで運行しますので、船社としては保有するリソースを集中し、高収益を得るためにあらゆる戦略を練っています。
船社での太平洋航路の収益が占める割合は、はおそらくボリュームの16%以上であることでしょう。
アジア発北米向けの輸送物量は今年も非常に快調で、5月には1,992,015TEUという史上最多のボリュームを記録しています。
そしてこの膨大な北米向け物量の実に60%近くが中国・香港発ということになります。
こうした状況を見ると、2022年後半もアメリカ向け輸送需要は旺盛で、船社による売り手市場が継続するものと思われます。
また、船社がグローバル視点で収益性を優先する戦略を取れば、日本発着航路に対する優先度が相対的に下落していくことは容易に想像できます。
ただ、北米西岸の船混みの緩和や労使交渉がスムーズに(?)行われていることなどを考慮すれば、スペース状況はある程度余裕を持った市場になっていくかもしれません。
業界のコラムによれば新造コンテナ価格もやや下落基調であり、船社の船腹量は来期には大幅に増加することも見込まれているので、楽観的には、スペースやコンテナが市場全体で不足する事態はだんだんと解消されていくのではないかと予想されます。
需給バランスの変動が価格に反映されるのは3か月~半年くらいはかかると思いますので、今年いっぱいは恐らく今とあまり変わらない状況だと思われますが、来期船社がいかにして余剰リソースを解消し、運賃の下落を防ぐ戦略を取るかが市場動向のカギになってくるものと思われます。
また日本発着航路においては、こうしたグローバル市況の方向性とは別の部分で、港湾や国内輸送のコストが収益を圧迫し、「会社は儲かっているけど日本は儲かっていない」と苦笑しながらお客様にローカルチャージの値上げをお願いするという事態になるかもしれません。
何が起こるか分からない時代ですので不確定要素が多すぎて予想がつきませんが、いずれにしても材料や製品を輸入する調達物流・小売業界にとっては消費者に直結する悪条件がすぐさま解消することにはならなさそうです。
それほど長い時代を眺めてきた筆者ではありませんが、昨今の情勢を見るにつけ、まるで昭和時代や冷戦時代のような、国家や個人の暴力が表層化する時代に戻っていっているような恐怖感を感じます。
経済力や軍事力に裏打ちされた国家のイデオロギーの主張が個人の暴力の正当化に影響するとは考えたくありませんが、次の世代のためにも穏やかな日々を望みたいものです。
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