ひとつの国の領土の一部が地理的に分離していることを「飛び地」と言います。

 

世界各地にはイギリス領ジブラルタルなど有名な飛び地が散在しますが、今から紹介するロシア領カリーニングラードもそのひとつです。

 

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バルト海に面し、ポーランドとリトアニアに囲まれたカリーニングラードの面積はおよそ215平方キロメートル。

 

だいたい石垣島と同じくらいの面積です。

 

 

この地はかつてケーニヒスベルグと呼ばれ、13世紀にドイツ騎士団によって建設された東プロイセンの中心的な都市でした。

 

第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て、一時はドイツのポーランド併合により陸続きの領地になったものの、戦後はソ連に編入され、多くのソビエト人が移住し、カリーニングラードと名を変え、ソビエトの都市として新たな発展を遂げることとなりました。

 

 

1990年、ソ連崩壊に先立ってエストニア・ラトビア・リトアニアのバルト3国が独立してからはロシアの飛び地となりましたが、ロシアがこの土地にこだわるのは、ここがロシアにとって貴重な不凍港だからです。

 

 

ロシアの主要な艦隊には、ムルマンスクの北方艦隊、ウラジオストクの太平洋艦隊、セバストポリの黒海艦隊、カリーニングラードのバルト艦隊などがあります。

 

NATO(や日本)と海軍力を対峙することを想定した場合、季節に関係なく自由に艦隊を航行させることはロシアにとって生命線と言ってよく、そのためのカリーニングラードであり、またクリミア半島でもあると言えます。

 

全方位を海洋に囲まれ、さらに太平洋に面している日本にとっては想像もつかない苦労ですが、大洋にアクセスできる不凍港の獲得は長年のロシア拡大の大きな方向性のひとつと言えるでしょう。

 

 

バルト3国は2004年に既にNATOに加盟していますが、このたびリトアニア政府は、EUの制裁対象貨物を積載したカリーニングラード向けの列車が通過することを拒否したと発表しました。

 

実際、その物資がカリーニングラードに到着することでリトアニアやEU諸国に対する軍事的脅威が高まる可能性もないとは言えません。

 

しかし、その土地に住む一般市民はさぞ不便を強いられていることでしょう。

 

陸続きの土地にある東西勢力の要衝には、歴史上ずっと、そして今もなお、我々には想像もつかないような嵐が吹き荒れています。