海運市況とサプライチェーンの稼働に大きな影響を与える北米西岸での労使交渉が始まります。
この交渉は、北米西岸の港湾労働組合 ILWU (International Longshore and Warehouse Union) と、同じく西岸の港湾使用者団体 PMA (Pacific Maritime Association)との間で定期的に行われており、前回の2014年の争議から8年ぶりとなります。
最近では協約の更新のための協議が2002年、2008年、2014年に行われていますが、いずれも交渉は紛糾、長期化し、オペレーションのスローダウンやストライキ、港湾側での現場ロックダウンなどによる港湾機能の低下と海上輸送の大きな混乱を招いています。
特に2002年の争議の際、PMA側が取ったロックダウンによって機能不全に陥った港湾機能は、当時のブッシュ政権による大統領令発令という介入によりようやく稼働を再開しましたが、港湾の混乱を取り戻すには約半年を要したといいます。
前回、2014年に合意された協約は、本来2020年に期限を迎え、更新のための協議が行われる予定でしたが、折しもCOVID-19の影響により健全な状況での公平な交渉が難しいとのことで期限は2022年7月1日まで延長されていました。
PMAは昨年11月にILWAに対し、さらに1年の延長を申し入れましたがILWAはこれを拒否し、今回協約は満期を迎えることとなり、協議が開始されることになっています。
海上運賃の高騰、スペースやコンテナの不足、港湾の稼働低下と慢性的な混雑が続くなか、この北米西岸労使交渉がサプライチェーンに与える影響は非常に大きなものになると予想されます。
アメリカではインフレが進み、原油価格の上昇によるコスト増、労働力不足など、労働者側は主張のネタはいくらでもあることでしょう。
しかしながら、COVID-19をきっかけとし、太平洋東航から世界中に影響が広がったこの物流混乱は、この労使交渉によってさらに深刻な事態を招くことは大きな懸念です。
すでにアメリカの荷主団体ではバイデン政権に対して早期、積極的な介入を要請し、破滅的な状況を招かないよう動きを取りつつあります。
これまでであれば、カナダ経由や東岸直行など、いくらかの回避ルートを模索することもできました。
この物流混乱のなかでは既に日本から北米向けのルートは非常に限られているうえ、船社からのサポートを期待するべくもありません。
この混乱期には、日本からSLB(シベリア鉄道)を利用して欧州までコンテナを運び、そこからさらに大西洋航路で北米東岸に着けるというウソのようなサービスまで登場しましたが、SLBの利用ももはや期待できなくなってしまいました。
1回目の協議は、2022年5月12日に開始されることになっています。
もともと協約の期限までの妥結を想定もしていないスケジュールで行われるこの協議、とにかく早期の妥結と大きな混乱の回避を願うほかありません。
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