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ロシアがウクライナに軍事侵攻した2022年2月24日から1週間が経過しました。
周到に準備されたとみられる軍事行動と政治的な発信は既に地域紛争の域を超え、完全にロシアとウクライナ間の全面戦争の様相を呈しています。



各船社や航空会社では、西側諸国による経済制裁に足並みをそろえる形でロシア向けサービスをストップしており、リスク回避のため紛争当事国であるウクライナ向けサービスも制限をかけているほか、保険会社ではロシア・ウクライナ地域に向けた貨物保険の戦争・ストライキ危険の担保解除を決定しています。

当事国への直接の物流だけでなく、輸送経路としてロシア上空やSLB,黒海の運行が正常に行えない状態が長続きすれば、昨今のコンテナ船の輸送混乱の解消はますます遠のき、世界的なスペース不足やコスト高の傾向はさらに継続することになるでしょう。

世界有数の資源輸出国であるロシアの紛争はエネルギー市場にも危機感を与え、昨日WTIでは一時115ドルという高値を記録しました。

ここしばらく上昇傾向だった燃油サーチャージにも、さらに輪をかけた上昇圧力が継続することが予想されます。


いままでに2回行われたロシア・ウクライナの停戦協議も具体的な成果をみないまま戦禍は拡大しつつあります。

2月28日に行われたロシア・プーチン大統領とフランス・̄マクロン大統領との電話会談で、プーチン大統領は停戦のための4つの条件を提示しています。

1. ロシアによるクリミア半島領有を承認すること
2. ウクライナの非武装化・非ナチ化
3. ウクライナ中立化の確保
4. ウクライナのNATO加盟断念

そもそもウクライナは旧ワルシャワ条約機構国内ではロシアに次ぐ軍事大国であり、兵装は旧ソ連時代のものが主流とはいえ、東西緩衝地帯に位置するこの国が非武装化を選択することはあり得ないでしょう。

ウクライナのNATO加盟は今回の軍事侵攻にあたり最もロシアが警戒していることですが、NATOは集団的自衛権を有する軍事同盟ですから、NATOに加盟したことで2国間の戦争がヨーロッパ対ロシアへ拡大する危険性を考えると、この緊張状態においての加盟はあり得ない。

ただし永続的にNATO加盟を放棄するかどうかは別の議論になります。


ウクライナのゼレンスキー大統領がEU加盟の申請を行ったことが報じられましたが、EUは軍事的な側面は持たないため、ロシアはこれを容認するかもしれません。

ただEUと経済的な連携が強まることでウクライナの国力が強化されることをロシアが懸念と捉えれば、休戦協定の条項はさらに追加され、話し合いは平行線を続けることも考えられます。

40年ぶりに開催された国連の緊急特別会合ではロシアを非難する合意がなされたと報じられましたが、国連の決定にはなんら強制力がないのが今の世界の実情です。


ストルイピンの時代からロシアはベラルーシ、ウクライナとともに大ロシアとして団結することを一貫してきました。

また、ギリシャ正教会の権威の復活もプーチン大統領の思想背景にあるとされています。

プーチン大統領を突き動かす信念には、民族紛争の歴史が多くない島国日本に暮らす我々には想像もつかない民族的・宗教的なイデオロギーがあるのかもしれません。

それでも、この情報が筒抜けの時代に非人道的な行為は決して賛同されることなく、一刻も早い事態の収束が望まれます。


今回の事態を受けて注視を続けなければならないのは、中間選挙を控えて支持率回復をもくろむバイデン大統領率いる米国、そして、ロシアと4000キロ超の国境を接し、ロシアの消費財の60%の輸出国であるあの大国ですね・・・