コンテナ不足とスペース不足、そして運賃の高騰で幕を開けた2021年も終わろうとしています。
2022年はどのような年になるのでしょうか。
少々長文になりますが私見をまとめてみました。
【北米航路】
一旦は踊り場に入ったかに見えた中米航路の運賃は2021年後半で再度上昇基調に転じ、アメリカの旺盛な輸入需要はいまだ衰えを見せていません。
北米西岸の港湾で問題になっている沖待ちは改善をみせず、大統領令による港湾施設の24時間稼働や滞留コンテナへの課徴金制度も抜本的な改善につながる効果は表れていません。
さらに、新型コロナウイルスの影響により港湾地域や物流インフラの人手不足も問題視されている中、来年には2022年6月に期限を迎える北米西岸港湾労使協約の更改交渉も行われる予定となっており、前回2014年のようにストライキやスローダウンが実施されればさらに混乱が進むことが懸念されます。
【中国・アジア航路】
船社は引き続き収益性を重視したリソースの配分を行い、あいかわらず日本発着航路の競争力は弱いと見え、スペースやコンテナ確保に苦慮する状況が当面継続すると思われます。
悪天候や港湾施設の稼働低下などの原因によりスケジュールの乱れも続いており、抜港や本船入れ替えが結果的にスペース不足を招いている状況も同様に継続すると見られます。
日本発着航路の船型の小型化やスケジュールの間引きも行われており、船社にとって日本発着航路が魅力的である状況を作り出さない限り、日本の荷主・フォワーダーの苦悩は続きそうです。
当初は安定していたかに思われた日中航路ですら、今年の後半からは運賃の高騰とスペース不足が問題となり、各船社は足並みをそろえて、特に輸入航路での運賃・サーチャージの値上げを繰り返し行っています。
船社にとっての特需に乗り遅れた感のある中国船社はここぞとはわかりにこの方針をしばらく継続すると思われ、仮にアジア航路の市況が安定化を見せる局面が発生したとしても、それを妨げる要因となる可能性もでてくるかもしれません。
【その他の懸案事項】
遠洋航路を持つメガキャリアの活況が業界紙の紙面を賑わせている一方、近海航路しか持たない中小船社は非常に苦しい状況だとも言われています。
大きな要因は傭船料の高騰と原油高。
特に韓国船社などは釜山港の滞貨が問題になっているように貨物はあふれていても、適正な船型の傭船と航路への配置が思うように行えず、さらに原油高などのコスト要因によってサービスの維持が大変な場合も多いのだとか。
原油高の影響は国内配送にも徐々に表れており、軽油価格の上昇に耐えきれず運送会社が燃油サーチャージの導入を荷主に打診している例も出てきています。
物流の混乱は現在輸入に大部分を頼っているアドブルー(高純度尿素水)の不足にも表れており、ディーゼルエンジンの窒素酸化物の浄化に必要なアドブルーが無いためお仕事ができない、という最悪な状況を招くこともあり得ます。
既にメルカリなどではアドブルーを扱う転売ヤーも登場していますが、困るのは皆さんですよ・・・
国際情勢も安定しているとは言えず、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナ、南シナ海、イギリス・・・、世界のどこかでサプライチェーンを遮断しうる紛争や混乱が発生した場合、日本の荷主が無関係であることはほぼないといえるでしょう。
【まとめ】
思いつくままに書き連ねてみましたが、悪いことしか出てこなかったこの状況。
輸送混乱は少なくとも半年は継続することでしょう。
そこから先はまだ見えません。
物流の混乱が身の回りの商品に及ぼす影響が最近になって頻繁にニュースなどでも報じられるようになってきており、一般の荷主様へも我々物流業者の苦悩が分かってもらえる機会も多くなったように思います。
だからと言って荷主様に同情を求め、甘えるつもりではないのですが、世の中の大きな流れは俯瞰で状況をつかみつつ流れに身を任せ、せめて自分の身の回りの荷主様や協力会社、現場のみんなが困らぬよう、気持ちよく仕事を進めることができるように心がけたいものです。
我々物流業者が物を運ぶことができるのは、現場で貨物を運んでくれる人たちのおかげです。
どうか来年も皆さんにとって安全に気持ちよく物を運ぶことのできる良い年になりますように。
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