いよいよ開幕した東京オリンピック。
日本勢は様々な種目で高いパフォーマンスを発揮しています。
とくにお家芸ともいえる柔道では、多くの階級で死闘の末にメダルを次々と獲得しつつあります。
日本古来の格闘技といえば相撲。
本来神事とされている相撲は伝統と格式を重んじながらも、日々力士たちは番付をめぐって無差別級の過酷な世界で鎬を削りあっています。
この過酷で無慈悲な勝負の世界を描いた、佐藤タカヒロ氏による「バチバチ」という漫画シリーズがあります。
元大関火竜の息子として生まれた主人公鮫島鯉太郎は、空流部屋に入門し、小兵ながら土俵にそのすべてを注ぎ込む魂の取組により、徐々に番付を上げていきます。
兄弟子や仲間たち、そしてそれぞれの物語を背負った個性豊かなライバルたちとの出会いにより鯉太郎が高みに上っていく姿は、見る者の胸を猛烈に熱くさせます。
この物語は、入門時代の「バチバチ」、幕下時代の「バチバチ BURST」、幕内に上がってからの「鮫島、最後の十五日」の三部作によって成り立っています。
三部作を通じ、体格に恵まれなかった鮫島が常にすべての取組に於いて死力を尽くし、取組相手の魂をも完全燃焼させてゆく闘い振りが描かれ続けていますが、特に三作目の「鮫島、最後の十五日」では、鮫島が幕内力士になってからの、とある一場所の取組を、初日から余すことなく追いかけていく内容になっています。
奇跡ともいえる取組で勝ち星をあげ、三役との対戦も乗り越えていく鮫島でしたが、この物語は十三日目が終了した時点で、永遠に結末を見ることのない閉幕を迎えることとなります。
作者の佐藤タカヒロ氏が41歳の若さで急逝してしまったのです。
作者と同じ山形県出身として描かれた鮫島鯉太郎。
その魂を削る取組は、作者の命も削ってしまったのでしょうか。
そう思わざるを得ないような壮絶な「最後の十五日」。
今でもネット上では残り二日の取組内容が考察され、永遠に迎えることのない千秋楽はこの物語の熱烈なファンたちにとって永遠のロマンとなっています。
賛否両論ありながらも絶対的な強さを体現して復活を遂げた白鵬と、全勝対決で迎えた千秋楽に果敢にも横綱を張りにいった新横綱照ノ富士。
東西両横綱の揃い踏みにより、各界にも更なる盛り上がりを期待し、更に日本人力士の台頭を願いたいと思います。
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