三峡ダムは中国湖北省の長江流域にある世界最大の水力発電ダムです。

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16年の長い歳月をかけて建設され、2009年に完成したこのダムは、高さ85m、幅2300m、貯水池の長さは600㎞にわたり、最大稼働時の年間発電量は日本の年間使用電力量の1割にあたる1000億㎾hというとてつもない規模のものです。


長大な大河川である長江のダムによる治水は中国政府の宿願であり、構想は古く100年以上前、孫文の時代にまでさかのぼると言います。

しばしば発生する大洪水を抑制するための水位調節とあわせ、1年間安定して水運の経路を確保し、重慶をはじめとする中国西部の開発に弾みをつけるため、大きな期待を持って建設計画は遂行されました。

一方で、巨大なダム湖の底に沈んでしまった美しい歴史的遺構も多く、その計画の実行までには長い議論の期間を要しています。


この三峡ダムですが、記録的な大雨の影響で水位が大幅に上昇し、危険な状態が長く続いています。

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三峡ダムの上流域にある都市には洪水の被害を被っている箇所も多く、すでに相当数の人々の暮らしに影響が出ているものと思われますが、その具体的人数や規模、対応策などは日本で大きく報道されることはあまりありません。


長江の上流、中国西部に位置する重慶市は人口3000万人以上が住む政府直轄の大都市ですが、ここでもまた今回の洪水とダムの増水の影響により既に大きな被害を受けつつあるといいます。

特に重慶は、あまたある長江の支流の中でも最も大きい嘉陵江という川との合流地点でもあり、より被害が甚大なものになる恐れがあります。


日本のテレビや新聞ではあまり見ませんが、日々YouTubeなどには三峡ダムと長江流域の様子についていろいろな情報が流れています。

なかには習近平総書記と李克強首相の力関係の変動や、三峡ダムが壊れそうだ、というふうに反中共や注目を集めたいだけの発信者が面白おかしく取り上げる内容の情報もあり、偏った一方だけの情報をうのみにするのは決して良いことではありません。

それでも、三峡ダムの水位が危険水位を超える領域で放流を調整し、上流を活かすか、下流を活かすかの難しい判断を日々行っていることは間違いない事実のようです。


実際にダムが決壊すれば洪水の被害は遠く南京までも到達すると言われています。

コロナの影響がまだ続く日本経済と物流業界にとって、興味本位では済ませられない惨事が起こらないよう祈るばかりです。

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