8月14日、イスラエルとUAEはアメリカとともにホワイトハウスで共同声明を発表し、両国の国交を正常化することで合意したことを明らかにしました。

今後両国は、合意内容に基づき、お互いの大使館の設置をはじめ金融や貿易、安全保障などの細かな協定を策定してくことになります。


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いうまでもなくユダヤ人の国であるイスラエルは、1948年の建国以来UAEやサウジアラビアなどをはじめとするアラブ人諸国との争いを続けており、複雑に入り組んだ対立構造の解決は不可能とまで言われる状況のなかでこの合意は歴史的に非常に大きな出来事と言えます。

我々物流業者にとっても、アラブ関連諸国向け輸出案件で時折発行を求められる「非イスラエル証明」などで垣間見られていた中東問題も、徐々に経済的な融和がすすみ、いつの日かZIMとUASCの共同運航といった夢の競演が見られるようになるのかもしれません。


非常に繊細なバランスの上に成り立っていた中東情勢に大きな変化を与える合意であるゆえに、一方では新たな懸念材料も今後増えてくることが予想されます。


パレスチナにとっては、対イスラエル関係においてUAEやアラブ諸国とは敵の敵は味方という構図だっただけに中東での孤立化が進み、破壊活動などが激化する恐れがあります。

実際、パレスチナ自治政府は今回の合意に対し、公式に「裏切り行為だ」とのコメントを発表しています。


また、アラブ諸国とイスラエルが結託することによってイランとの対立構造はより明確になり、ただでさえ経済政策で困窮しているイランが孤立を深めることは、ペルシャ湾近辺の情勢をより緊張させることが懸念されます。

核保有国であるイランが軍事的緊張を高める行動をとることは日本の物流にとっても多大な影響があることは間違いありません。

さらに、サウジ・UAEとイランの代理戦争と言われるイエメン内戦の激化も予想され、交通の要衝であるスエズ運河から紅海、アデン湾の安全航行を脅かす原因となり得ます。

イランの背後にはトルコ、そして中国、ロシアの影が見えているだけに、イランとの軍事的緊張を高める外交政策は世界の平和にかかわると言っても過言ではありません。


もともと、アメリカ大使館のエルサレム移設など、あからさまにイスラエルとユダヤ人に迎合する政策を行っていたトランプ大統領ですが、今回の一件は彼の選挙対策というにはあまりにも世界情勢への影響が大きく、もっと別の部分での長期間にわたる水面下の取引や利害の一致の結果であり、トランプ大統領が花を持たされただけなのかもしれません。

今後のほかのアラブ諸国の動きも注視が必要ですが、イランとの親交が深く、中東の原油依存度が大きく、海運大国であり
、アメリカの同盟国であるわが国の立ち回りは相当重要なものになってくると思われます。