アメリカの調査会社が発表したデータによると、2020年7月のアジア発北米向けコンテナ輸送量が対前年実績を上回ったとのことです。



コロナウイルス蔓延によるロックダウンと不況を乗り越え、アジア地域の輸出産業の復興と物流業界に活況が戻りつつあることは非常に良いニュースと言えます。


3月から6月ごろにかけて船会社では低下した物量に合わせて配船を間引きし、積載率を維持することによって収益性を確保し、加えて下落した原油価格によるコスト減少という下支えもあり、第2四半期は思わぬ高い業績を示した会社もあったようです。




しかし海上コンテナ輸送市場は荷主と船社の需給関係だけでなく、発着コンテナのバランスや本船スペースの状況によって大きく運賃が左右されます。

アジア発海上運賃の指標となる上海航運交易所(SSE)の発表する指標( SCFI : Shanghai Containerized Freight Index)  の北米西岸向け運賃を見ると、中国からの輸出産業が再開し始めた5月ごろUSD1800/FEU程度だった運賃は急上昇しはじめ、時には1週間でUSD600もの上昇幅を見せながら現在はUSD3144/FEU(2020.8.7)という水準にまで至っています。


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この傾向は中国発だけでなく、ベトナムやフィリピン、マレーシアやシンガポールなどのアジア諸国に同様にみられており、タイトなスペースとコンテナ不足、そして高騰する運賃は輸出業者の大きな頭痛のタネとなっており、なかにはコンテナ1本あたりUSD800程度のプレミアムを支払うことでコンテナとスペースを保証するといったサービスを提供する船社も現れています。

日本初のヨーロッパや太平洋航路の運賃はこれほどまでに乱高下する印象はあまりありませんが、中国をはじめアジア発欧米向けの運賃の有効期限は非常に短く、市場の状況によって短期間に大きく変動するのは珍しいことではありません。

また、日本発の輸出物量は船社市場にとってそれほど重要なシェアをもはや占めていないことも残念ながら事実です。


船社の営業の話を聞くと、輸入コンテナの物量は徐々に回復傾向を見せつつあるものの、自動車産業をはじめとする輸出企業の物量はいまだ復調の様子を見せていないとのこと。

こうした状況でこのような話を聞くと意外な印象もあり、アジア発の経済再開の波に乗り遅れたようで寂しくもあります。

一方で、表面ではハイテクや情報産業で激しい主権争いと経済摩擦を繰り広げるアメリカと中国ですが、人々の生活を支える消費財や工業原料は中国に多くを頼らざるを得ないアメリカの事情がよくわかるのも興味深いことです。