米軍によるソレイマニ司令官殺害とイランによる報復のイラク駐留米軍基地への攻撃。


予断を許さない状況が続くイラン情勢ですが、イランとアメリカの対立構造を説明するには1978年のイラン革命にまでさかのぼる必要があるため長い話になってしまいます。


ここでは、なぜアメリカがここまでイランに対して強硬な態度をとることができるのか、一つの切り口を見てみようと思います。


二次大戦以降、先進国の中東への関与は一様にその石油資源目当てであり、そのエネルギーの確保や利権のために争いが繰り返され、莫大な投資や軍事力の投入が行われてきました。


しかし、トランプ大統領は2019年9月に自身のツイッターで、中東の石油はもはや必要ないと述べています。




なぜなのでしょうか。

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その最大の要因ともいえる出来事が、2006年以降にアメリカを中心に発生しました。


21世紀の世界のエネルギー市場に大きな影響を与えたと言われる「シェール革命」の到来です。


シェール(Shale)とは、頁岩(けつがん)と呼ばれる、泥が固まった層状に剥離しやすい岩石のことです。

そして、シェールガスやシェールオイルは、この頁岩層に残留するガスやオイルのことを指すわけですが、ガスや液体をほとんど通さない頁岩層から効率よくこうした資源を収集するのは非常に難しいことでした。


頁岩層に残留するガスや原油の存在は古くから発見されており、地表に露出した頁岩層から自然に漏れ出すガスの収集は100年ほどまえからアメリカで行われていましたが、採算がとれる坑井はわずかだったようです。

しかし、根気強く技術開発を進めたアメリカは、とうとう頁岩層から効率よくガスやオイルを採掘する技術を確立します。

この技術は次の3本柱にまとめられます。


水平坑井 : 地下2000~3000mに広がる資源を含んだ頁岩層を、水平方向に1000m以上掘り進む技術

水圧破砕 : 坑井に大量の水を送り込んで水圧をかけ、頁岩層を破砕しガスやオイルを流れやすくする技術

マイクロサイズミック : 水圧破砕によって発生した破砕帯(フラクチャー)の進み具合を深度の計測によって計測する技術


いささか専門的ですが、ともあれこの技術の確立によってアメリカは世界最大の資源国に変貌を遂げたのです。


エネルギーの中東依存度が高い日本にとっては、中東リスクを下げるための良い材料ともなりますが、当然貿易交渉のカードであることには変わり有りません。


また、だからといってアメリカが中東への軍事介入を弱めるということではなく、同盟国としての日本の立ち回りはさらに複雑なものになってきます。


アメリカがイラクから撤退すると、いったんなりを潜めているISの台頭を再び許してしまうという見方もあるようです。


あまりにも複雑な中東情勢。


今日はエネルギー技術の話だけにしておきましょう。


資源エネルギー庁の記事が非常に詳しいです。(非常に親米的です・・・当然か)
参考に。