国際商業会議所 (ICC = International Chamber of Commerce)は、2019年9月、Incotermsの改訂を発表しました。

2020年1月1日より、あらたにIncoterms2020が発効することとなりました。





今回の改訂点はいくつかありますが、最もインパクトのあるものは

「DATを廃止し、新たにDPUを設ける」

というものでしょう。


これは、従来存在したDAT (Delivered At Terminal : ターミナル持ち込み渡し) を廃止し、現在存在するDAPよりもさらに先に進んだ部分までのShipperによる手配を前提とする仕向け地荷下ろし渡し =  DPU (Delivered at Place Unloaded) を新設するというものです。


本来、DATのなかで規定されていたターミナルというのは、コンテナターミナルやCFSといった輸送上の特定の場所ではなく、Shipper、Consignee双方が合意するいかなる場所でもよいことになっていたのですが、ターミナルという言葉の誤解が多いうえ、その受け渡しポイントでの貨物管理に対しての責任が不明確な場合があることが懸念されていました。

今後、貿易条件にDPUを適用した場合、DATで規定されていたShipperの輸送責任の範囲がさらに拡張され、Consigneeの手に輸送を完了した貨物が完全に委ねられた状態までのリスク負担が必要となります。

今回の改訂は、いわゆる貨物受け渡しポイントとして設定されたコンテナターミナル内での貨物管理など、リスク負担がConsigneeに移譲されているにも関わらず、貨物の管理の自由度が完全にはConsignee側にないことに対する、あいまいな責任所在のグレーゾーンをなくすための改訂と言えそうです。



ちなみに、通常の輸出入手配でよく見かけるFOBとCIF(CFR)ですが、海上輸送、とくにコンテナを使用した輸送においては、じつは以前より不適格とされています。

これは、まさにその貨物受け渡しポイントとなるコンテナターミナルでの貨物管理に対するリスク保全が万全でないことが起こりうるためです。


たとえば、CIFで輸入したコンテナが港に降ろされてからConsignee側にリスク管理が移動しても、そのコンテナが波にさらわれる恐れがある場合に講じることのできる対策は限定されてしまいます。


コンテナでの輸送には以前よりFASとCPT(CIP)を使用するよう推奨されており、FOBとCIF,CFRの改訂はしばしば論じられていますが、今回も保留されています。

FOB,CIF,CFRが一覧表の下のほうに記載されているのは、じつはこんな理由があったのです。



ただ、以前からも述べている通り、このIncotermsは売主、買主の契約のためのあくまでも物差しの役割であり、双方が合意してさえいれば過去のIncotermsを使用することも可能です。

(たとえばDDUや今回のDATなど)

物流業者としては貿易条件の意味を正しく理解し、正しい費用を積み地、揚げ地双方に請求するとともに、トラブルがあった際には毅然とスムーズに対応できるよう備えておきましょう。


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