小さいころ石の裏側でよく見かけた小さなダンゴムシ。
あれが40㎝ものの大きさに成長したと考えればほぼ間違いありません。


世界最大の等脚類であり、海底の掃除屋として知られるダイオウグソクムシ。

その機械的なフォルムは近未来的でもあり、ガシャポンや模型などのモチーフにされるなど、コアなファンが多い生物です。


ph_daiogusokumushi



深海に生息するためその生態はまだ詳しく知られていませんが、何よりもその名を有名たらしめたのはその生命力。

なんと、数年間摂食しなくても生命を維持することができるのです。


かつて鳥羽水族館で飼育されていたダイオウグソクムシは、2009年1月にアジを一切れ食べて以来5年1か月もの間なにもエサを食べることがなかったとか。


そもそも体が大きいということはその生命活動の維持にエネルギーを要すると考えるのが生物学的な常識ですが、どうやらこの深海の賢者は代謝活動を抑制し、極端にエサの無い環境においても次なる食事の時までじっと耐え忍ぶ術を身に着けていると考えられています。


人間の絶食記録はいろいろありますが、一般的には水のみを摂取してハンガーストライキを行ったインドの革命家バガットさんの記録116日、そして固形物を摂取しないでハードダイエットに挑んだスコットランド人アンガスさんの記録382日が知られています。

どちらも記録樹立が目的ではなく、イギリス支配下のインド人囚人の待遇改善、そして自身のダイエット(207㎏→82㎏)という目標を達成することでその絶食を終了しています。


人間が好き好んで行う絶食と異なり、なぜダイオウグソクムシがエサのある環境下であえて摂食しないことを選択していたのかはわかりません。

それでも、鳥羽水族館の係員の方は愛情をもって毎日エサを与え続け、食べなかった食事をきれいに片づけていたに違いありません。


ダイオウグソクムシはその大型化のメカニズムにも謎が多いため、脱皮の経過観察などはその重要なチャンスなのですが、まだ世界でその完全な脱皮を観察されたことはありませんでした。

実は先日、鳥羽水族館でダイオウグソクムシの半身脱皮が観察され、全身脱皮が完結すると世界初の例になるチャンスが訪れようとしていたのですが、今朝その個体は残念ながらその命が絶えてしまったとのことでした。

毎日世話をしていた係員さんのご苦労に敬服するとともに、日本の水族館にまた世界に先立つ研究のチャンスが訪れることを祈ります。


ちなみに日本近海にも近縁種のオオグソクムシが生息しており、かなりの美味とのウワサもあります。


実際に食べた人の話によると・・




大きさの割に歩留まりが悪く、味は香ばしい苦いエビ味だとか。

東京海洋大学の学園祭、海鷹祭でチャンスに巡り合えるようです。