日本を代表する造船会社、JMUと今治造船が11月29日、資本業務提携することを発表しました。


いままで日本の造船業界の1位、2位として業界をけん引してきた2社が、LNG船を除く商船分野で共同営業設計会社を設立し、生産体制の効率化を図るとのことです。


日本の物流の主力を担う海運業界を支える造船業、それはコスト削減と業務効率化の典型といってもよい業界といえるでしょう。

大量一括輸送で輸送コストを低減する海運業界からの需要に応えるべく業界の再編や業務改善を繰り返してきた日本の造船業界ですが、ここしばらくの間は中国や韓国の低コストな船舶にシェアを圧迫され、後塵を拝してきました。

一方で、世界の業界全体ではこうしたコスト削減競争が需要過多を招き、さらなる価格低下と採算の悪化の傾向にあるため、韓国などでは政府が民間造船会社に対して資金援助を行っており、これは政府による公的支援が安価な受注を助長し、市場全体に悪影響を与えているとしてWTOに提訴したりもしています。


瀬戸内海の海岸線を走ると、大小さまざまな造船会社が美しいしまなみの景色の一部として処々に見ることができます。


今治造船の歴史は長く、1901年に今治市で創業し、中小の造船会社と合併しながら世界を代表するような船舶を数多く建造してきました。


キャプチャ
http://www.imazo.co.jp/html/products/pro_cont.html


いまでも我々に馴染みの多いコンテナ船などを多く建造し、その信頼性の高さと技術力を世界にアピールしています。


一方のJMUも石川島重工と播磨造船所をルーツに持つ非常に歴史の長い会社ですが、太平洋戦争当時に戦艦大和を建造した呉海軍工廠のドックを現在も使用しており、巨大なコンテナ船だけでなく、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦かがやイージス艦ちょうかい、南極観測船しらせなどを建造しています。

キャプチャ
https://www.jmuc.co.jp/products/naval_vessel/



このように高度な造船技術とインフラを保有する2社が業務提携し、海外勢に対して競争力を発揮することはかつての造船大国日本の再来を彷彿とさせる喜ばしいニュースだととらえる向きが多いようです。

一方で部品の供給や作業を請け負う下請けの会社では、さらなる効率化とコスト削減が加速するのではとの懸念もあるようです。


ITとマッチングとECという形のないサービスばかりが金銭的な価値として世の中を膨らませる風潮がありますが、LSSの導入をはじめ、モノを物理的に運ぶ業界にますます資本が投下されていくべきだと考えています。


コスト削減も大切ですが、投下すべき箇所に資本を投下して業界自体が持続可能な勢いを維持できるよう荷主さんたちから理解と支援をいただきたいものですね。