感謝祭の休日を翌日に控えた夕方、アメリカでトランプ大統領はある法案に署名しました。


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それは、「香港人権法案」。


11月20日にアメリカ議会で可決されていたこの法案は、ニューヨーク証券取引所が取引を終えた夕方、大統領の署名により発効しました。


香港人権法案とは、いったいどのような内容の法案なのでしょうか。


香港人権法案は、正式には「香港人権・民主主義法案」といい、原文は

Hong Kong Human Rights and Democracy Act of 2019

といいます。

その骨子は、次の通り(wikipediaより)


  • 1992年米国-香港政策法に定められた原則を再確認する。そして、香港における民主主義人権、および十分に自立していることの重要性をもって、米国の法律の下に中華人民共和国本国とは違った待遇を受けるものとすること、を含む。
  • 制定後90日以内および2023年までの毎年、香港における米国の利益に関する条件についての報告書を国務長官に発行することとする。この報告書には香港の民主的制度についての動向を含むものとする。
  • 香港について中華人民共和国と異なる扱いをする新しい法律、協定を制定する前に、国務省は香港が十分に自立していることを確認すること。
  • 大統領は、香港の特定の書店ジャーナリストに対して監視拉致拘禁強制告白を行った責任者を明らかにすること。また、基本的自由を抑圧したりなどの行動については、その者の合衆国における資産を凍結し、その者の米国への参入を拒否すること。
  • 2014年に香港に居住したビザ申請者は、香港の選挙に関する非暴力的な抗議活動に参加したとして逮捕されたり、拘留されたり、その他の不利となる政府の措置を受けたことがあっても、それを理由にビザを拒否されることがないものとする


この法案成立に対して、中国は当然のごとく反発しており、報復を宣言しています。

また、人民日報の評論では、「中国に内政干渉する法案は紙くずだ」と断じています。


一国二制度という特殊な環境下にある香港とはいえ、その中で行われている政策や司法についてアメリカの法律が干渉しうる根拠は何なのでしょうか。


それは、一国二制度のなかで高度な自治を守られてきた香港において、アメリカがそれだけ財を成してきたからです。


1997年にイギリスから中国に返還される以前、1992年にアメリカは、米国香港政策法という法案を成立させ、返還後の香港の処遇についての方向性を定めていました。

そして、そこで確保された権利の下、返還後の香港で莫大な財産を獲得し、さらに現在においてもアメリカの投資した財産が香港に多く存在すると考えています。


今回の法案の成立は、こうした歴史的経緯のなかでアメリカの財産を守るため、という大義名分によってすすめられました。


米中貿易交渉が続く中、決してよい材料とも思えないこの法案ですが、少なくとも日本においては株価にも為替にもあまり大きな影響を見せていないようです。


出口の見えない香港の混乱、そして大国同士のあからさまな意図が見えてくる中で、今後どのように世界の情勢は進むのでしょうか。


世界を米中対立構造の視点から眺めれば、その最前線はまさに日本。

日本の安全保障とは何か、本気で考えざるを得ません。


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