イギリス下院議会は11月6日をもって解散しました。

ここから、12月12日の総選挙に向けての選挙戦が開始されます。


EUがイギリス離脱期限を2020年1月31日に延長し、イギリス国民はこの総選挙で今後の方向性に向けての審判をくだすことになります。


総選挙の構図としては、ジョンソン首相率いる与党・保守党と、コービン党首率いる最大野党・労働党の争いとなる見込みですが、ジョンソン首相の推進するHard BREXIT(合意なき離脱)を立法化するためには保守党が過半数を獲得する必要があります。

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解散時点で過半数を持たない与党であった保守党にとって、今回の選挙の成り行きは、3度も延長されたEU離脱期限に離脱を完遂できるかどうかを左右する、決して負けられない勝負になります。

一方、再度の国民投票案を提示しつつもその後の明確な方向性やビジョンを示せていないと言われている労働党にとっては、今回の選挙戦を有利に進めることが出来る要素が見つけにくい状況ではありますが、EU残留を主張する第二、第三の野党(スコットランド民族党と自由民主党)の獲得議席しだいでHard BREXITを回避する道筋を残すことが出来るのかもしれません。


一度は国民投票によって決定されたはずのEU離脱、ここにきてイギリス国民は再度選択を迫られることになるわけですが、EU離脱に関しての明確な意思を示すというよりも、消去法によって次善の策を選択するという性格が強い選挙になるような雰囲気です。


日本にとっても、今年2月にFTAが発効し、ますます経済的な連携関係が強くなりつつあったEUですが、イギリスの離脱により経済的な混乱が懸念されます。

さらに、イギリスがEUから離脱してしまうと、日本は様々な貿易協定や安全保障の協定、条約などを個別に締結し直す必要があり、それは選挙の結果がでたのちに1月31日までに完了することなどあり得るはずもなく、当面はWTOのルールにしたがった貿易を行い、暫定的な合意を積み重ねつつイギリスとの国際関係を維持していくものと思われます。


外務省、経済産業省、防衛省、そのカウンターパートとなるイギリス政府機関のお役人たち、きっと眠れない日々が続くことになるのでしょう。


イギリス - グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国。


イギリスは今でも、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの連合王国ですが、そのなかでも、13世紀ごろからその勢力を強め、周囲を制圧し覇権を握ってきたイングランドこそが現在のイギリスのもっとも表面的なアイデンティティだとされています。


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EU統合後もポンドを通貨として維持し、アングロサクソンの長たるプライドで長年のあいだ国民の意識を統合し、ある意味では連合国の制圧を続けてきたイングランド。


EUからの独立で、今後100年の世界史、ヨーロッパ史にどのような転換をもたらすのでしょうか。