台風一過、すっかり秋らしい空気を感じるようになってきました。

千葉県を中心に痛ましい爪痕を残していった台風、まだ元の生活に戻れていない方々にお見舞い申し上げるとともに、復旧作業にあたっている方々に感謝いたします。


さて、以前に梱包のことを書いた際、すこしコンテナ内部の環境について触れました。


だんだん涼しくなってきたとはいえ、輸送中のコンテナの内部環境は想像以上に過酷です。

また、赤道付近を通過する仕向け地に向かった航路では、気候は常夏。

日本の季節に関係なく、そこは年中南の海です。

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輸送時の貨物の保護を考慮するとき、傾斜や衝撃、振動に関する配慮は感覚的に手当てができるかもしれません。

トラックでの輸送を考えると、なんとなく状況の想像がつくからです。
(それでも我々の予想以上に傾斜しますが)


しかし、忘れずに対策をしておかなければならないのは、温度と湿度です。


ON DECKで船積みされたコンテナ内部は赤道付近を航行する際、日中には60℃くらいまで温度が上昇します。

高温を嫌う貨物については、シンプルに貨物の温度が上がらない工夫をする必要があります。

また、昼夜の温度差をなだらかにし、コンテナ内の結露による貨物の漏損を防ぐ必要もありますね。


今日はリーファーコンテナを使用しない方法を考えてみましょう。



1.UNDER DECKでの搭載を船社に依頼する。


実は、これをやると庫内温度は25℃~40℃くらいの間である程度安定します。

しかし!

通常、一般的には船社はコンテナの搭載位置を約束したり、万が一ON DECKに搭載したせいで貨物にダメージが発生しても、決して保障したりしません。
(VIPカスタマーについては知りませんが)

コンテナの搭載位置は船全体のバランスが考慮されているため積みつけ位置の指定は基本的に受け付けられず、またトランシップなどで南の国のCYに1日置かれただけで温度はすぐに上がってしまいます。

この方法は、正直、現実的ではありません。



2.コンテナ内に断熱シートや吸湿剤の使用。


最近、ドライコンテナの内部に断熱シートを張り巡らせ、温度の変化をなだらかにする商品が開発されています。

これにより、昼夜の差が40℃以上あった温度差を15℃程度にとどめたり、最大60℃以上となるコンテナ内温度を35℃程度に抑えたりする効果が期待できます。

また、コンテナ内に強力な吸湿剤を施し、結露を最大限に抑制する方法もあります。

コストが気になるところではありますが、それでもリーファーコンテナの運賃よりは安いでしょう。

いろいろなメーカー製のものがありますが、こちらの会社さんのWebsiteでは実験データなどがありなかなか興味深く拝見させていただきました。





3.RADの利用。


RADとは、Reefer As Dry の略。

つまり、リーファーコンテナをドライとして使用する、という意味です。


リーファーコンテナは、もともと保冷目的で製造してあるため、壁面や天井は分厚く、また断熱材が施してあり気密性も高く保てる構造をしています。

リーファーコンテナの運賃が高い理由は、コンテナに一体となった冷蔵装置に電力を供給し続け、温度を保つためのコストや管理が必要だからです。


しかし、ドライコンテナとして使用するとそうした管理は不要となりますので、場合によってはドライコンテナと同程度の運賃を取得することができることもあります。


RADによる運賃取得、船積みにはある一定の条件が整わなくてはなりません。

それは、

・船会社にとって都合のよい航路であること。

つまり、リーファーコンテナが余っている港から、リーファーコンテナが欲しい港に向けた輸出であること、ということです。

日本はアジアや南米からの食品の輸入にリーファーコンテナを多く利用しています。

船会社は積み地の需要に応じて揚げ地で余剰のコンテナを空で積みますから(ポジショニングとかいいます)、空よりはマシ、と船社の思惑にうまくハマれば好条件をゲットできるチャンスがあります。


・ラッシングや根止めが極力必要ない外装の貨物であること。

リーファーコンテナは床面もアルミ製で、ドライコンテナのように木の床にパレットを釘で打ち付けて固定したりするようなことができません。

また、コンテナ内寸もドライに比べて二回りくらい狭くなっています。

RADの貨物はある程度外装状態を選ぶと言ってもよいでしょう。


温度管理に関係ありませんが、南米向け古タイヤなど、船社が大好物なRADの航路などありました。




ともあれ、コンテナの温度管理を荷主が能動的に行うことができるのはFCLに限ります。

LCLの場合、その他の貨物と混載され、温度管理など期待すべくもありません。

貨物にとってより過酷な状況と言えるでしょう。



以前にも述べたように、まずは十分な梱包、それから貨物の価格や一度に輸送する物量などを考慮して最適な手段を選ぶことが重要です。

また、通関業者や輸出に慣れた梱包業者などのアドバイスにしっかりと耳を傾け、必要な措置を行うことが最終的に荷主の利益につながるものと考えます。


海上輸送とは貨物にとって想像以上に過酷な環境で、なおかつ荷主の責任が非常に重い輸送手段なのです。