人々が大海原に旅立つようになった15世紀後半、大きな世界地図のうえで自分たちの船の位置を特定することはとても重要なことでした。
陸地の見えない大海原で自分たちの位置を推定し、目的地までの距離や日数を知ったり、座礁を避けたりすることは生命にかかわる一大事でした。


人々は北極星や太陽など基準となる星の高さを六分儀ではかり、緯度を知ることは比較的早い段階で、それもまずまずの精度で身に着けることが出来ました。

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しかし、経度を知ることは緯度を知るよりも相当時間のかかることでした。
なぜなら、経度の計測のためには正確な時刻を知ることが必須だったからです。

日食や月食、木星の衛星の食に至るまで、計算上の天文現象と実際の観測のずれを計測することで位置を特定しようと試みましたが、当時最高の精度を持った時計は振り子時計であり、穏やかな海では成果を上げることのできた計測方法でも、船が揺れてしまうと全く信頼できる計測ができませんでした。

人々が正確な時を知ることが出来るようになったのは18世紀後半、イギリス人の職人ハリソンが当時としては最高の精度を持った時計、「クロノメーター」を製作してからのことでした。
このクロノメーターは航海のために発明された時計で、船の揺れの影響を受けないゼンマイ式、巻いている途中でも時の刻みを止めず、ゼンマイの巻きの強さによっても時間の進みは一定のままという画期的なものでした。
彼が改良を重ねて製作したクロノメーターH-4は、81日間の航海でわずか8秒程度の誤差しかなかったと言われています。


今でも機械式時計の精度測定にはクロノメーター基準というものが設けられており、クオーツや電波時計が当たり前のこの時代においても機械式時計のステイタスというべき基準として引き継がれています。
パイロットのための腕時計として有名なブライトリングは、自社全ての腕時計がクロノメーターであることを誇りとしています。


現在は誰にでも簡単にGPSとナビゲーションの恩恵を受けることが出来ます。
さらに、今までは米軍のGPS衛星を主に利用していたシステムも、日本独自の準天頂衛星みちびきの運用が2018年11月1日から始まったことにより、いままで誤差数メートルと言われたGPSの精度が数センチにまで高まったと言われています。


古来、星を見上げて旅をした人々。
我々も、日々関わっている船舶や航空機が安全に運行できているのは、目には見えなくても宇宙からの情報のおかげです。


これからは空を見上げるのには良い季節です。
冬のダイヤモンドといった1等星のオンパレードやしぶんぎ座流星群、ふたご座流星群などもこれからの時期、楽しみです。

寒く無いように気を付けて、ちょっと空を見てみるのはいかがでしょうか。


2018年11月上旬 おうし座南・おうし座北流星群が極大

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