簡単な書類作成とシンプルな運賃体系で簡単に輸出や輸入ができる国際宅配便は、貿易の知識をとくに必要としなくても気軽に国際貨物の手配ができる便利なものです。
越境ECの市場が拡大するにつれて、個人向け輸入貨物の取り扱いも増加しているように思えます。


比較的安価な商品と個人消費者向けの輸入貨物を取り扱う機会の多い国際宅配便(エクスプレス)業者にとって、そして貨物を輸入する輸入者に取って大変ありがたい制度、それはある一定の条件を満たす輸入貨物に適用される「無条件免税」です。


輸入貨物に対する無条件免税は、関税定率法第14条、ならびに輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(輸徴法)第13条に規定されており、1申告に関わる輸入貨物の課税価格(申告価格)が1万円以下の場合はその関税および消費税が免除される、とあります。


この制度を最大限に有効活用することにより、国際宅配便業者はは納税の立て替えや輸入者からの徴収の手間を省くことができ、その輸送の最大のメリットであるスピードを発揮することが出来ます。
そして輸入者はその輸送スピードを享受するだけでなく、税金も支払わずにすむということになります。


しかし、どんな決まりにも例外は規定されています。


申告価格が1万円以下であっても、食料品、スポーツ用品や革製品、靴、そして衣料品のなかでも編み物である場合は免税物品から除外されてしまいます。

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編み物とは、おばあちゃんが暖炉の前で編む毛糸の編み物だけでなく、生地のつくりそのものを指します。
縦糸と横糸が合わさって織られた布地を織物(Woven),横糸どうしが絡み合って繊維状になったものを編み物(Knit)と呼びますが、伸縮性の有無で判別することが多いようです。
伸縮性のある衣類(Tシャツやパンツ、ストッキングなど)は編み物、ワイシャツやジーンズのような伸縮性のない衣類は織物であることが多いですね。


一見複雑に見える決まりですが、関税率と同様、日本独自の産業保護のためにルールが決められていることが見て取れるでしょう。

また、インボイス価格だけをあてにしていても、国際宅配便業者の場合、規定の運賃を加算して申告する場合もあり、そうなると予想に反して申告価格が1万円を超えることもあります。
そのような場合は残念ながら(?)税金が発生することになります。


どんなに簡単な品物でも、個人的なやり取りの品物で、代金収受を伴っていなくても、プレゼントやお詫びの品物でも、海外から「財」を国内に入れる場合には相応の価格を申告し、必要であれば納税をしなければ輸入することはできません。

時折なぜ税金を払う必要があるのか執拗に食い下がるお客様もいらっしゃいますが、手落ちのない仕事をしたうえで、上手に説明することのできる正しい知識とかみ砕いた言い回しをつねに用意しておきたいですね。