いままで海上輸送の話の時に何となく使ったかもしれませんが、貨物を海上コンテナで輸送するにはFCLとLCLの二つのモードがあります。

キャプチャ


FCL : Full Container Load

船会社もしくはフォワーダーにブッキングする際、コンテナ単位でスペースを借り切り、海上運賃やTHCなどの諸費用もコンテナサイズと本数に応じて課金されます。

コンテナの中身によって費用が変わることはありません。
1トン積もうが20トン積もうが基本的に料金は一緒です。
(まれに航路によってはHeavy Weight Surchargeなるものが課金されることがありますが)

輸出される貨物は荷主さんの倉庫や乙仲さんの倉庫でコンテナに積み込まれ、船会社ごとに定められたCY(Container Yard)に運び込まれ、通関を終えて船に積み込まれます。


LCL : Lower than Container Load

コンテナ1本分もの物量がない場合には、フォワーダーや混載業者が定期スケジュールを組んでいる混載コンテナへのブッキングを行います。
通常、貨物の運賃算定の基準となる重量は1トン(または1Ⅿ3)が最低となります。
海上輸送の場合は1トン=1Ⅿ3と換算され、1トン=1RT(Revenue Ton)として、運賃や付帯費用の算定基準となります。

輸出される貨物は、CFS(Container Freight Station)と呼ばれる、混載業者の倉庫に運び込まれ、そこで通関を終えてから混載業者の手によってコンテナに積み込まれ、コンテナはCYに搬入されます。

混載業者の倉庫作業費やコンテナ輸送のためのドレージ料金、コンテナに対して発生する船会社の費用(CY Charge / THCなど)は、CFS Charge や CHC(Container Handling Charge)として、これも1RTごとに荷主に請求されます。


FCLとLCLには、取り扱う物量以外にも、いろいろな相違点があります。
一概にどちらが優れているとは言えませんが、貨物の性質や要求される納期などにより、向き不向きがあります。

少し違いを比べてみましょう。


★スケジュール

通常、FCLのCYカット(CYにコンテナを運び込んでなおかつ通関や船社への貨物データ送信などすべての準備を完了すること)は、本船入港の前日となっていることが多いです。
つまり、土曜日に出港する本船に輸出貨物を乗せたいとき、最悪金曜日にCYにコンテナを搬入すればよいわけなので、カット日にバンニング、CY搬入、通関ということも理論上は可能です。
(乙仲さんには相当危ない橋を渡らせることになりますが)

一方、LCLについては、同じ本船に乗せるにしても混載コンテナとして同じCYカットが定められているので、通関を終えたすべての混載貨物をコンテナに積み込んで金曜日にCY搬入しようと思えば、CFSでのカット(貨物をCFSに搬入し通関その他の手続きを終えること)は最低木曜日です。
CFSでもカット日搬入は相当慣れた荷主でない限りけっこう嫌がられますので(通常断られます)、水曜日には出荷しなければなりません。

同じ本船に乗せることを考えると、貨物の出荷はFCLのほうがより遅らせられると考えてもよいでしょう。


また、到着地までの航海を考えると、主要港から主要港だとそれほど問題ではありませんが、ニッチな向け地への貨物の場合、LCLサービスそのものが存在しないかもしれません。

混載業者も定期スケジュールを立てるからには「少ないから今週は無しよ」というわけにはいかず、採算の取れない向け地にダイレクトで混載を建てることは普通しません。

混載業者も、釜山やシンガポールのようなハブ港にLCL貨物を集積し、小さな仕向け地にダイレクト混載を建て直して(リコンソリ)輸送しますが、それでもFCLしか選択肢がない向け地というのは結構あるものです。


★費用

海上運賃は先ほどの話の通り、コンテナ1本と混載貨物のトン数に応じた運賃を比較すれば簡単にどちらが高いか安いかがわかります。

しかし、そのほかの費用はFCLとLCLで少し異なります。

FCLの場合
集荷 : 荷主さんが積み込みをしてくれるならコンテナサイズに応じたドレージ料金のみ
     積んでくれないなら、トラックで乙仲さんなどの倉庫に輸送し、そこであらたに積み込み料金なども発生します。

THC : 船社に請求される額に応じて、コンテナサイズごとの費用が発生します。

LCLの場合
集荷 : 混載業者のCFSまでの輸送料金が発生。チャータートラックか混載便かは、貨物の物量やスケジュールに応じて選択すればよいでしょう。

THC : 混載業者からのRTに応じた費用が発生します。


「FCLとLCLどちらが安いんですか?」と疑問をもつ荷主さんはたくさんいらっしゃいますが、貨物の積み込み状況やIncoterms (FOBかCIFか、など)によって状況は異なります。
いろいろなパターンがありますが、筆者の経験ではだいたい10~12RTくらいが分岐点になることが多かったように思います。
それぞれで発生する費用のパターンを計算するシートを作成し、簡単なシミュレーションを行えるようにしておくとよいかもしれません。


★貨物の管理


梱包の時にも話しましたが、LCL最大の脅威はほかの貨物と混載されるということです。
自分の貨物がどんな貨物の上に積まれ、また自分の貨物の上にどんな貨物が積まれるかわかりません。
また、破損が起こった場合でも積み付け状況などの情報が開示されることはほとんどありません。
日本のCFSは丁寧な仕事をしていても、リコンソリの時に天地が無視される、と言ったことも発生します。
しかしながら「上積み厳禁」などはあまり通用しない理論です。ヘタをすると、天井までの容積分の運賃をくださいと言われるかもしれません。

一方、FCLの場合は荷主の管理のもと、コンテナに積みつけが行われ、Consigneeのもとに届くまでコンテナの扉は開かれません。
また、コンテナそのものが梱包ともとらえられますので、裸の状態の機械や穀物、バラバラの自動車部品など、特別な梱包の手配をすることなく輸出の準備を整えられます。

さらに、危険品や温度管理が必要な貨物の場合、まだLCLでのそういったサービスは非常にまれです。
(ごく一部でサービスは存在しますが、仕向け地も少なく料金も比較的高額です)



このように、FCLとLCLのどちらが優れているかを判別するには、様々な条件を取り揃えて判断することが必要です。
さらに、総合物流業者であれば、航空便もしくはクーリエ(Express)の利用をも検討材料に加える場面もあるかもしれません。


一人でやるのはとても大変ですが、それぞれの分野のプロと常に情報を共有し、仲良くしておくことがお客さんへベストのソリューションを即座に提供するための一つのコツだと考えています。