輸送手段としての航空機の立場を確固たるものにしたのがダグラスDC-3であるならば、ジェット機の優位性をゆるぎないものにしたのはボーイング707であると言われています。

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ボーイング707の起源は、1940年代後半、米空軍の時期戦略輸送機の需要を見越してボーイングが自己資金で開発に着手した367-80にさかのぼります。


まだジェット機の優位性が確立していない時代、大型輸送機の時期主役はダーボブロップ機であるとの意見が多い中、1954年に初飛行した367-80は、その性能と安全性が評価され、米空軍から空中給油機KC-135として大量に発注されました。

当時、B-47やB-52などの戦略爆撃機の運用が増加するにつれ、空中給油機の必要性が高まっていたためです。


このようにして信頼性を積み重ねていった367-70は、満を持して1952年、旅客機への改装が着手されます。

どの航空会社からも発注を受けていない、いわば見切り発車での開発スタートでしたが、パンアメリカン航空の名物経営者ファン・トリップは20機の発注を決定し、開発を後押ししました。


当時、レシプロ機からターボブロップ機への移行期間のなか、先行して市場に投入されていたジェット旅客機コメットの事故などもあり、商業使用への道はたやすいものではありませんでした。


しかし、ひとたび1957年12月の初飛行から約10か月後、パンアメリカン航空の定期路線ニューヨーク~パリ線に就航してからは、その安全性と100名を超える乗客を運ぶ輸送能力、マッハ0.8の巡航速度を実現した707はたちまちベストセラーとなり、太平洋航路や大西洋航路などの長距離航路に投入されていきました。

これにより、当時はまだ多く運用されていた船舶による旅客輸送の時代は終焉をむかえることとなります。


707はその後も様々な用途に応じてモディファイされ、活躍を続けます。


1962年には米空軍アメリカ大統領専用機VC-137Cとして採用され、また1972年には早期警戒機E-3としての運用も開始されました。

VC137CE-3 AWACS 8 Dec 2017


そして軍用型の機体まで含めると1992年までに実に1000機以上が生産され、歴史に残るベストセラーとなりました。



ジェット旅客機の黎明期に産声をあげ、ジェット旅客機の実力を盤石なものに押し上げた707は、いまでも世界の空を飛び続けています。



367-80の開発には秘話があります。

1955年にシアトル郊外で行われた水上機レースの会場で、宣伝のために367-80はフライパスをする予定になっていました。
しかし当日、ボーイング社のテストパイロット、アルヴィン・ジョンストンは、なんとこの72トンもある機体を観客の頭上でバレルロールして見せたというのです(しかも無許可で!!)。


なんという・・なんというロマンでしょう。
今ではいろいろな意味でとても考えられないことです。


しかし、ジェット機の黎明期に一人の男が自分のクビをかけて367-80の性能を信じ、観客にアピールして見せたその漢気にはロマンを感じずにはいられません。


都市伝説という説もありますが、なんと動画も残っています。
(少々見づらいですが)


そして、見終わったらジョンストンの気分を味わうため、ぜひ Google で

Do a Barrel Roll 

と検索してみてください。