古来、東アジアとヨーロッパ・北アフリカを結ぶ東西交易路は、草原の道、オアシスの道、そして海の道を総称して、シルクロードと呼ばれてきました。
そして、中国の四大発明である紙、印刷術、羅針盤、火薬などはこのシルクロードを通う人々によって中央アジアからヨーロッパに伝承され、その後の文化の発展に大きく貢献しました。


航海術が発展途上であった時代、交易の多くは陸路を使用したものでしたが、現在の物流の多くはコンテナによる海上輸送によって賄われています。
しかし、現代でもこの東西交易を支える陸上交通路は活用されています。


それは、鉄道によるユーラシア大陸横断輸送、SLB(シベリア・ランド・ブリッジ)です。

キャプチャ


1970年ごろからシベリア鉄道を中心に、大陸を横断する鉄道輸送網が発達し、徐々にネットワークを拡大していきました。
しかし、当時は強盗による被害や貧弱な追跡管理機能によるロストなども頻発し、さらにソ連の崩壊なども重なって1990年ごろからはほぼ休眠状態となっていました。


しかし、2000年ごろからロシアの経済発展に伴い、徐々に鉄道網も再整備され、韓国や中国からモスクワに向けた輸送が徐々に活発になっていきました。
そして、モスクワ近郊へ各国の自動車産業が進出するにつれ、日本や中国からの自動車部品供給のルートとして重要な地位を確立しつつあります。


モスクワへのコンテナ輸送は通常、サンクトぺテルブルクやエストニアのタリンを足掛かりに行われることが多いのですが、モスクワまでは600㎞以上もあり、またスエズ運河ルートで輸送した場合では海上輸送だけで1か月以上かかるため、効率性が優先される自動車産業への部品供給ルートとしては最適と言えませんでした。

鉄道による輸送は中国の連雲港やウラジオストクを起点として、約25日程度でモスクワまで到達するとされています。
筆者が2年ほどまえにリサーチを行った際には、40ftコンテナで4-5倍の運賃だったように記憶していますが、それでも圧倒的に早いトランジットタイムに対して魅力を感じる荷主は少なくありませんでした。


海上輸送の経験のある方はピンとくると思いますが、コンテナ輸送は発地で船会社からコンテナを借り、着地で船会社にコンテナを返却するものです。
鉄道輸送を利用したい場合、どこでコンテナを借りてどこに返せばいいんだろう???


SOC(Shipper's Own Container)を利用する手もありますが、非常にユニークだと思われたのはUnico Logistics という韓国フォワーダーのサービスです。

Unicoはシベリア鉄道と提携し、自社コンテナを鉄道網で運用する独自のサービスを展開しています。
そして、韓国船社と提携し、日本で鉄道輸送のブッキングを受けると釜山などの港からコンテナを回送してきて荷主に提供します。

ブッキングはある程度前広に行う必要がありますが、定期ブッキングへの対応も可能でしたので、空コンテナの確保についての懸念は取り払われると考えられます。

また、輸出時も日本の港湾から釜山に輸送され、そこからボストチニーなどの鉄道起点に輸送されるため、日本からはほぼ発地を選ばず、北海道や日本海側からも積極的に運用が可能な点が非常にユニークと言えます。


今年の9月にJETROに下記のような記事が掲載されていました。


国交省、シベリア鉄道による貨物輸送の実証実験を開始

(こちらはFESCOの日本代理店、トランスロシアエージェンシーによるサービスのようですね)

北極海航路、シベリア鉄道。
まだまだフロンティアが残された国際物流業界。

常に柔軟な思考を持って、既成概念に縛られることなく新たな輸送サービスを提供できるプロでありたいですね。