パナマ運河とスエズ運河、そしてドイツのユトランド半島の根元で北海とバルト海を短絡するキール運河(北海バルト海運河)を合わせて世界の三大運河と呼びます。

どの運河も海上交通の要衝として海上交通と世界経済の発展とともに開発され、商業面のみならず軍事面においても重要な役割を果たしています。


そして、人類史上はじめて、現代でないと実現しえなかったフロンティアが今まさに開拓されようとしています。


それは、北極海航路です。

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北極海航路はかつてロシアによって、限定された季節にのみ利用されていました。
しかし、冷戦が終結してベーリング海峡が自由に行き来できるようになり、さらに地球温暖化により北極海の海氷が減少することにより、北極海航路の商業利用が実現性を帯びてきています。


北極海航路の利用のメリットとしては大きく下記の二つと言えるでしょう。

1.距離の短縮

横浜~ロッテルダムの航路を比較すると、スエズ経由20900㎞に対して北極海航路では13700㎞。
なんと35%も距離が短縮されるのです。


2.航行の安全性の確保

スエズ運河経由ルートでは、海上交通のリスクとされる3か所のチョークポイントが存在します。
それは、今までにも紛争の要因となった軍事的要衝であるスエズ運河、海賊のリスクが大きいアデン湾周辺、そして交通の難所マラッカ海峡です。

冷戦の終結した今、北極海航路にはチョークポイントが存在しないとする説が有力です。

余談ですが、漫画「沈黙の艦隊」に登場した原子力潜水艦「やまと」は、北極海で宿敵ともいうべき米海軍のシーウルフ級を撃破し、ニューヨークへ進路を向けました。
しかし、その作品が描かれた時代、まだその北極海には米ソ両軍のミサイル原子力潜水艦が展開していたのです。


しかし北極海航路にはまだまだ解決すべき課題も多く残されています。
おもには割高なコストが問題とされていますが、それは

- 耐氷船と特別に訓練されたクルーによる航海が必要であること
- ロシアの砕氷船による航行支援を受ける必要があること
- 航行可能な船舶は4000TEU程度の船級に制限されること

などが要因としてあげられます。


しかし、地球温暖化の副産物として生まれた北極海航路、実用化されると日本の港湾も、いまは釜山や上海、香港や深圳に奪われてしまった東アジアの重要ハブ拠点としての地位を取り戻すことが出来るかもしれません。


今年の8月23日、ウラジオストクを出港した3600TEUのコンテナ船 Venta Maerskは、9月30日にサンクトペテルブルグに到着しました。

[FT]コンテナ船、初の北極海航路を出発 


APM Maerskによるこの航海は実験的なものであったとはいえ、極東航路の新たな時代を開く兆しともいえるのではないでしょうか。


極東航路をにらんだ地図をもう一度眺めてみてください。
日本の港湾はあまりにも重要な場所に位置していると思いませんか?