昨日すこし書いた共同海損、耳慣れない言葉かもしれません。
意味を知っている人であれば、聞きたくない言葉かもしれません。

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共同海損とは特に海上輸送のみに用いられ、船舶が航行中に積み荷とともに危険な状況にさらされたとき、その船の安全を確保するために取られた行為に基づく損害を船主や用船者、荷主で共同で負担するという制度です。

簡単に言うと、船が衝突したり座礁したり、火事になったり故障したりして沈みそうになった時に、船長の判断により貨物を捨てて船を軽くしたり、消化や救助、曳航されたりして発生した費用(共同海損費用)、そして損失のあった貨物の費用(共同海損犠牲損害)を関係者全員で負担するというものです。


共同海損とは、原則的に次の4つの要件を満たした場合に成立すると言われています。

1. 共同の危険が現実に存在していること

2. 共同の安全のためになされた行為であること

3. 故意であり、かつ合理的な行為であること

4. 犠牲および費用が異常な額であること


船の航行にはとても多くの人や関係会社が関わり、積み荷は大量で高額、そして危険回避に伴う費用や救助費用などは莫大なものです。

そして、一般的に共同海損分担金は荷主や関係者のその船の航行に関わる財により案分されますが、もともとの分担金は普通、常軌を逸した金額であるため、自分の貨物が幸運にも無事だったとしても、荷主の貨物の価値を大きく上回る分担金を課せられることがほとんどです。

さらに、無事だった貨物を引き取りたくても、分担金を支払わないと貨物を引き取ることもできません。


自分の貨物が安価であるから、無償のサンプルだから、などと油断していると、海上輸送では思わぬリスクを背負う場合があるわけです。


一般的に海上輸送保険は共同海損費用を負担します。
また、船会社が共同海損を宣言した場合(G.A. = General Average)、保険を付保していれば保険会社に連絡すればあとはほとんどの手続きを進めてくれます。
通常、保険会社にはこういった場合に専門に対応する海損部といった部署があります。
こういった場合に手続きを代行してくれる部分も含めた保険料と言っても差し支えないでしょう。


運送人である船会社やフォワーダーも、運送者の責任として破損や紛失があった場合には損害を負担しますが、非常に限定された金額です。 (1kg あたり 2SDR とか・・・解説はまたいつか)

また、ひまな人はBLの裏面約款を読んでみると分かりますが、こと海上輸送の場合、運送人の責任範囲を定めた個所を詳しく見てみると、運送人が非常に保護されているという印象があります。


近代の海上輸送に関わる国際ルールは、1924年に成立したヘーグルールに、そして共同海損の基本的な考え方は1890年に成立したヨーク・アントワープ条約に基づいています。

しかし、共同海損と海上保険の考え方そのものは紀元前の古代オリエント時代にさかのぼると言われています。


2013年、インド洋を航行中のMOL COMFORT(8110TEU)は猛烈な嵐に見舞われ、船体が破断するという考えられない事故が発生しました。

近年においても自然の驚異は想像を絶するものです。
紀元前においてはなおさら、航海は命がけだったことでしょう。

貿易なくては成り立たない時代ではありますが、保険の重要性と海上輸送の特殊性については常に頭に置いておきたいものです。