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昨日、中国向け越境ECの中で、ワシントン条約について少し触れました。
今日はこのワシントン条約のことについて詳しく見てみようと思います。


ワシントン条約とは、1973年にワシントンで作られた国際条約で、正式には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約 : Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flola」といい、日本は1980年に締結国となっています。
頭文字を取って、CITESと略されることも多いですね。

業界では、ワシントン条約に関わる(恐れのある)貨物を、「ワシントン」「CITES (サイテス)」などと呼んだりしています。

日本ではこの条約が「輸出貿易管理令」「輸入貿易管理令」にそれぞれ法令として反映され、該当の貨物(生きた動物も敢えて貨物と呼びましょう)は税関に対する輸出申告、輸入申告時に規制を受けます。


では、具体的にはどのような貨物がどのような規制を受けるのでしょうか。


ワシントン条約では、具体的な規制対象の種を、附属書Ⅰ~Ⅲにより規定し、次の通りに附属書ごとの規制や手続きを定めています。

附属書Ⅰ:原則として商業取引は禁止。
附属書Ⅱ:輸出国政府機関が発行した輸出許可証がないと輸入できない。
附属書Ⅲ:種を指定した締結国からの輸入の場合、輸出国からの輸出許可証がないと輸入できない。

いろいろとややこしいようですが、つまりリストに掲載された種が含まれた貨物は輸出入に特別な手配や許可が必要となる、ということです。
また、ⅡとⅢはよく似ていますが、Ⅲには産地の指定があるということ。
実際にリストを見れば一目瞭然ですが、Ⅲには必ず産地が併記されています。


ワシントン条約附属書(動物界)平成29年10月4日から発効(PDF形式:538KB)
ワシントン条約附属書(植物界)平成29年10月4日から発効(PDF形式:342KB)



動植物や皮革製品、食品などを海外と取引されたことのある方は、通関業者から「この製品の原料の学名は?」と聞かれた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
慣れた方なら瞬間的に「ボスタウルス!」と返答しておられるかもしれません。
通関業者が、初めて聞く素人に「?」の質問をする理由、それは、この附属書にはすべての種が学名で記載してあるからなのです。


ここまで書くと、動植物製品を扱う人たちが気を付ければいいことで、一般的な雑貨には関係なく思えるかもしれません。
しかし、意外なところに対象物品は含まれています。

たとえば海外の方にも人気のある日本の健康食品やコスメ製品。
日本でもドラッグストアやスーパーで普通に購入することができ、中国越境ECの人気商品群の一つと言っても過言ではありません。

このような商品にしばしば含まれている、「アロエ」。
実は、「アロエ・ベラ」を除くすべてのアロエ属は附属書Ⅱに該当します。
実際には、キダチアロエが使用された製品が凄く多いですね。

観葉植物としてもなじみがあったり、昔は腹痛の薬として食べたり、ヨーグルトに入っていたり、こんなにも一般的な品物なのに、なぜ?と思われるかもしれませんが、泣く子と税関には勝てません。
なにしろ国際条約に明記されていますから。

アロエが含まれた製品には注意しましょう。
うっかり出荷すると、「なにアロエですか?」と通関業者から「?」な質問を受けることになります。
正しい知識を持って、業者さんを困らせないようにしましょうね。

あとはギターの指板にも使われているローズウッド。
こちらも全て附属書Ⅱに該当します。
日本は品質の高い高級ギターの輸出にも実績がありますが、こうしたメーカーさんはちゃんと許可証を取っておられます。
また、輸入でも山○楽器さんのような、輸入を生業としておられる大手さんは抜かりがありません。

ただ残念なことに、個人輸入者が知らずに海外から購入し、うっかり現地から輸出されてしまったとき・・・CITES許可証のない状態で日本に到着した貨物は、積み戻すこともできず滅却するしかありません。
現地でもCITES許可証がないと輸入できず、永遠に外貨として国境のはざまをさまようことになるからです・・・