2月1日未明、ミャンマーの首都ネピドーでは、最高指導者であるアウン・サン・スー・チー氏をはじめNLD(National League for Democracy : 国民民主連盟)の幹部たちがミャンマー国軍に拘束され、国軍最高司令官のミン・アウン・フライン将軍率いる国軍が政権を掌握しました。

ミャンマーの国軍は独立した組織として政治に関与することが憲法で認められており、2016年にスー・チー政権が誕生して以降も、NLDによる経済政策や国内の民族紛争に対して常に対立の姿勢を表していました。

さらに、ミャンマーでは東南アジアでもインドネシア、フィリピンに続いて3位の新型コロナウイルス感染者を出しており、このこともNLD政権に対する批判を強めていました。


2020年11月の総選挙で圧勝し、政権を盤石にしたかに見えたNLDでしたが、
選挙の不正に関する調査要求を退けたことを引き金として、選挙後初めての連邦議会が開催されるまさに当日の朝、国軍は、周到に用意された無血での軍事クーデターを成功させました。


当初、現地の支店のレポートによると、街には大きな混乱もなく、ヤンゴンの港湾や税関なども特に業務上支障のない状態だとのことでした。

しかしヤンゴン空港は4月30日まで閉鎖されることになっており、空路での人や貨物の行き来は閉ざされた状態です。

銀行送金や通信の制限はクーデター発生後の早い段階から行われたようで、この状態が長引くと、国際物流や貿易取引そのものに大きな影響を与えることが懸念されます。


日数が経過するごとに国際的な世論も高まっています。

ミャンマー国内でもデモが過激化していくことで混乱が大きくなり、死傷者が発生する事態に発展する可能性も大きくなってきます。


2月8日には、クーデター発生後初めて国軍によるテレビ演説が行われ、次のような施政方針が発表されました。


  1. 新たな選挙管理委員会を立ち上げ、法に基づいて選挙人名簿の検証を行う。
  2. 新型コロナウイルス感染拡大の防止のための対策を継続して実行し、新型コロナウイルスの予防と治療に一層迅速に取り組む。引き続き新型コロナウイルス基金を運用し、ワクチンの調達に努める。誰一人取り残されることがないよう、ワクチンの接種を進めていく。
  3. 新型コロナウイルスにより、打撃を受けた経済の立て直しを速やかに行う。国内外からの投資、そして関係国からの協力を歓迎する。これまでになされた合意事項は法にのっとり順守し、前政権下で認められていた事業については可及的速やかに認可を出す。
  4. 全土停戦合意文書(NCA)に基づき、国内和平の達成に向けた活動を遂行する。
  5. 国家権力は、国家緊急事態宣言の終了後に、民主的な手法で実施される選挙において勝利した政党に移譲される。



これに対しアメリカのバイデン大統領は、アメリカ国内のミャンマー国軍関係者の資産凍結などの経済制裁の実行を発表しました。



ミャンマーは中国の一帯一路政策に参加しており、中国との経済的な結びつきも強いと言われています。

ミャンマー国軍と中国との関連を指摘する声もあり、ミャンマー国内の中国大使館前でも民主化を叫ぶNLD支持者のデモが行われているとの報道もあるようです。


単なるミャンマー国内の文民・軍事政権対立ではなく、世界的に起こっている対立構造の縮図がこの国でも展開されていくのでしょうか。

民主化を叫ぶだけでこの問題は解決するのでしょうか。

お互いに振り上げたこぶしのおろす場所の模索には非常に時間がかかりそうな気がします。



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