中国・アジアからヨーロッパや北米向け輸出の活況は継続し、それに伴う本船のスペース不足と運賃高騰は続いています。

日本ではそれほど運賃は乱高下していないものの、中国やアジアに寄港する遠洋航路の本船スペースは圧迫され、さらに空コンテナも収益性の高い積み地に優先的に回送されることから、日本の輸出コンテナの不足状況はしばらく続くことになりそうです。


この傾向はONEやCMA-CGM,OOCLなど遠洋のサービスを持っている船社の話だったのですが、ここにきて日中韓やアジアに主要航路を持つ韓国、中国船社も中国でのコンテナ不足を理由に日本向け輸入のブッキングストップなどの措置を取るようになってきています。

ここには、また別の事情が隠されています。

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かつて「世界の工場」と呼ばれた中国は1980年代、世界中からの古紙やプラスチック、スクラップ等を積極的に輸入し、原料として再利用を行っていました。

一時は世界中の廃プラスチックの50%が中国に送られていたと言います。


しかし、バーゼル条約が1989年に採択され、また中国でも次第にゴミ処理や環境問題に関する議論が高まるにつれ、廃棄物の輸入に関する規制が強まっていきました。

そして2018年ごろ、リサイクル原料の輸入規制を強化され、「資源ごみ」の輸入は禁止されることになりました。

この時点である程度中国向け物量は減少することになりましたが、このたび、改正 固体廃棄物汚染艦橋防止法が2020年9月1日に施行され、さらに規制が厳しくなるとともに罰則も強化されています。

罰則の対象範囲は中国の輸入者だけでなく運送人も含まれているため、トラブルを避ける為にこのようなリサイクル原料の取り扱いを全面的に拒否する船会社も現れています。

さらに、2021年1月から中国では固形廃棄物の輸入は全面的に禁止されることが決まっており、
この改正法は政策的移行期間ともとらえられています。


このように、中国向けコンテナ貨物の主要カテゴリーのひとつであるリサイクル原料の荷動きが悪化していることに加え、2020年8月の中国貿易統計では前年比9.5%増と好調な輸出に対し、輸入は2.1%減少となっています。

中国で空コンテナが不足する状況は、このようにいくつかの事情が絡み合って発生しているようです。


船会社でもできる限り、輸出キャンペーンや空コンテナの回送を行いコンテナのインバランスの解消に努めていますが、世界的と言ってもよい歪みは一企業の努力だけではどうにもならず、このような状況はしばらく続く恐れがあります。

新型コロナの蔓延により崩れ始めたサプライチェーンのバランスは今なお前例がない規模で崩壊を続けており、我々物流業者としても広い視野で長期的に情勢を判断することが非常に重要です。