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7月2日に米上院で全会一致で可決された香港自治法は、7月14日、トランプ大統領のサインによって成立しました。


これは、1984年の中英共同宣言で定められた1国2制度の概念を脅かす個人や法人を特定し、ビザ発給の制限や場合によってはアメリカの資産凍結、ドル取引の停止を定めるもので、もし大規模に実行されれば非常に大きなインパクトのある制裁措置となります。

基軸通貨であるUSDの支配力を背景にしたこの制裁、中国の対外投資や企業活動に壊滅的な影響を与えかねない危険をはらんでおり、当然中国も即座に報復措置の検討を発表しています。


経済摩擦の力比べは事実上軍事力を背景としており、つい先日ポンペオ国務長官が南沙諸島への中国軍の進出に対して「違法な領有権の主張に反対する」と公言しました。

局地的な領土・領海紛争には明確な意思を示すことを控えていたアメリカがある一線を越えた発言をしたともとられるこのコメントですが、その後米軍は南シナ海に空母ロナルド・レーガンとミニッツ2隻を派遣して訓練を行い、さらに7月14日、同空母打撃群に所属する駆逐艦ラルフ・ジョンソンが「航行の自由作戦」を遂行しています。

航行の自由作戦もですが、同じ海域に原子力空母が2隻存在すること自体が異常な事態と見ることもでき、経済摩擦と同じく軍事的な緊張も高まっていることは間違いありません。



韓国キャリアが台湾へのダイレクト航路を持たないのは中国への配慮とも言われますが、いまのところ我々物流業者に何らかの影響を及ぼすような中国、韓国、香港、台湾キャリアの政治的な規制や施策はみられません。

ただ、今後中国関連企業がアメリカからの制裁を受ける動きが広がった場合、貿易取引を行う銀行はもとより、我々物流業者としても正確な情報を入手し、情勢を把握しておく必要が出てくるかもしれません。

以前OFAC規制に関する記事を書きましたが、非常に面倒で複雑な制度ですが知らなかったでは済まされない大切なことです。

国際物流に関わる以上、国際政治の動向把握と荷主様への情報提供は我々の大切な使命のひとつです。