リチウムイオンの開発者として知られ、旭化成の名誉フェローである吉野彰氏にノーベル化学賞が授与されることとなりました。

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受賞の喜びを語る吉野氏は常に明るい表情を見せておられ、純真でひたむきな人間性を表しているかのようです。

同じ日本人として誇りに思い、心からお祝い申し上げたいと思います。


吉野氏の開発したリチウムイオン電池は、従来の鉛蓄電池や乾電池と比較して、安全で軽量、大容量で充電可能であることから、IT時代の黎明期からIoT時代の今に至るまでの電気機器の発展にとって不可欠な存在であるとともに、大型化する技術をもとに電気自動車や再生可能エネルギーの充電施設など、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトにも重要な役割を果たしています。


スマホからワイヤレスイヤホン、ノートPCなど、もはやリチウム電池を内蔵した機器無しには社会生活が営めないと言っていいくらいの存在感。

我々物流業者にとっても、あまたある危険品の中でもUN3480とUN3481については輸送条件が頭に入っている人も多いのではないでしょうか。



そんな吉野氏が2年前に専門誌に寄稿したエッセイのなかに、次のような記事がありました。

「新規事業を成功させるためには三つの関門を乗り越えなければいけない。それは『悪魔の川』『死の谷』『ダーウィンの海』である。」




『悪魔の川』とは、新技術を製品に導入する以前の基礎研究の段階。

『死の谷』とは、開発した製品を事業化するために様々な工業的問題を克服する段階。

そして、『ダーウィンの海』とは、市場が新製品の価値を認め、普及するまでの段階。


吉野氏の素晴らしいところは、開発に着手した段階からそのゴールを明確にイメージし続け、決して妥協しなかったこと。

そして、その基礎研究の段階からすべての活動が企業の中で行われたことだと思います。


企業とは資本主義社会のなかで経済活動によって生み出される収益によって存在することができています。

企業活動の中で世の中にイノベーションを与え、人類の未来に貢献した価値が認められたノーベル賞受賞の決定、暗いニュースが続くご時世に光明を与えるような吉野氏と奥様の笑顔でした。