今年の初めから中国船社が順次適用を開始したLSS(Low Sulphur Surcharge)。

金額や条件は船社によって多少異なりますが、おおむねUSD15/TEUくらいでしょうか。

そして、輸出でも輸入でも中国側の荷主にチャージされることも特徴です。


そして、今年の10月ごろからさらに中国発着以外の航路についても、LSSの適用が開始されるとのうわさがあります。


LSSとはいったい、何を根拠として発生するどのような費用なのでしょうか。

yahagi


黒い煙をモクモクとなびかせて颯爽と大海原をゆく船。

実は、この黒いモクモクこそがお話の始まりです。


第二次世界大戦後、経済活動が活発になり、船舶での貨物輸送量が増加するにつれ、船舶から生じる油や廃棄物による環境汚染が問題になってきました。

そして、相次いだタンカーの事故による油の流出などにより環境保護の気運が高まる中、1983年にそれまでに散発的に制定された国際条約を取りまとめる形で、マルポール条約(MARPOL 73/78)が発効しました。


マルポール条約には、船舶の航行や事故による海洋汚染の防止を目的として、規制物質の排出や監督・通報の規定が定められています。

日本も1983年6月にこの条約に加入し、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律という国内法が制定されています。


中国ではいち早く、2018年10月より、独自に定めたECA(Emission Control Area = 排出規制区域)を航行する船舶は硫黄分0.5%以下の重油を使用するか、もしくは認可済みの排ガス浄化システム(スクラバー)を導入することが義務付けられました。

中国発着航路の海上運賃にLSSが適用されたのは、この規制が根拠となります。


また、国際海事協会(IMO)では、2016年10月に開催された第70回海洋環境保護委員会(MEPC70)において、2020年1月より、世界中の一般海域を航行する船舶のSOx(硫黄酸化物)排出規制を強化することを決定しており、中国での規制と同様、硫黄分0.5%以下の重油を使用するか、スクラバーの装着が義務付けられることになっています。



中国独自で定められた規制と異なり、世界中の一般海域が対象となるこの規制強化は、船会社にとっても大きなインパクトとなる見込みです。


硫黄分の少ない重油に切り替えようとすれば、単純にコストは30%くらい上昇するものと見込まれます。

また、通常船舶で使用されている、硫黄分等の混じり物が多く、動粘度の高い重油(C重油)から硫黄分の少ない重油に切り替えると、そのままではエンジンを痛めてしまう懸念もあります。
(粘度の高い重油を燃料にする場合、タンクからエンジンに導入する過程で重油を加熱しているため)

場合によっては、仮に燃料を切り替えたとしても、燃料タンク内の残留物を洗浄する必要がある場合もあるそうです。


C重油を継続して使用する場合、スクラバーを導入する必要がありますが、当然コストがかかるうえ、海域によってはスクラバーからの排水放出が禁じられていることもあり、運用が難しいこともあります。


現在運航中の船舶にどれほどの手を加え、コストをかけるかはその船舶の船齢などにもより、判断はまちまちになることが予想されています。

また、燃料を供給する側からみても、単に硫黄分の少ない重油の製造を増やすのか、現在の船舶の機構にマッチさせるためにある程度の粘度を保った重油の製造を維持するのか、非常に判断に迷うと考えられます。

船主にとっても、機材を改造するのか、維持するのか、原油価格の変動まで考慮するとコストだけでは到底判断することはできないでしょう。


このように、船会社にとって(そして製油業界にとって?)最適解が見当たらないまま、環境保護のための規制が実施されようとしています。


おそらく10月くらいには各船社が航路ごとに足並みをそろえてチャージを決定してくると思われますが、まだどの船社もはっきりとした方針を打ち出していません。


このような複雑な事情が、今もってLSS導入が決定していても具体的な指針が発表されていない原因であると筆者は考えています。

SOx規制の概要と3つの手段 国土交通省