来年の東京オリンピックを控え、こんな記事が。




そして、ひと月ほど前にはこんな記事も。




どちらの記事にも、物流のパンク、というような意味の言葉が用いられています。


先日記事にした都内の交通量制限のテストも含め、オリンピックが近づくにつれて様々な試みが取りざたされています。
そして、そのどれもが物流のパンク回避のためという名目のもとに行われているようです。



しかし、いったい物流のパンクとは具体的にどういった状況をさしているのでしょうか。



キャプチャ


筆者はかつて、台風と高潮の被害にのため機能を停止した関西空港から流れてきた貨物によって発生した物流のパンクを体験しました。

苦境を支えてくれた当時の現場の方々のことを考えると思い出すのもつらい体験でしたが、いくつかのことを学ぶことが出来た機会でもありました。


◆物流とは、工程から工程の連鎖で成り立っていること。

◆各工程はそれぞれ別の事業者によって行われている場合が多く、全体最適のコントロールが難しいということ。

◆その工程のどこがパンクしても、全ての物流はストップしてしまうということ。


例えば、港に到着したコンテナを通関し、倉庫まで配送するという単純な物流を例にしても、少なくとも船会社、場合によってはフォワーダー、通関業者、コンテナヤード、ドレージ業者、倉庫業者が関わっています。

そして、ドレージ業者の動きひとつを例にとって見ても、

◆許可まだかな~ (通関業者)
◆ディスパッチまだかな~ (通関業者 or 船会社 or フォワーダー)
◆並びが長い・・・ (CY or 道路事情)
◆ピック出来た!でも倉庫までの道のりも渋滞・・ (道路事情)
◆倉庫に着いた! でも順番待ち?? (倉庫事情・労働力不足)
◆やっと荷下ろし開始! でもずいぶん長くかかってるな~ (倉庫事情・労働力不足)
◆さあ帰ろう。でもまた返バン行列・・・ (CY or 道路事情)

ほかにもいろいろあると思いますが、ちょっと思いつくだけでもこんなにもいろいろな要素が。


倉庫から先の物流も、最終的にはラスト1マイルと呼ばれる宅配便事情にまで工程の連鎖は継続します。


このような多種多様な工程の連鎖をすべて見極め、マクロな視点から最適化を図ることはとても難しいことです。

しかしながら、メディアの視点や専門家らしき方々の分析、行政の施策などはあまりにも局所的で短絡的に思えます。

一般の人たちの目に留まりやすい交通渋滞やラスト1マイルばかりが取りざたされているように思えますが、実際にはもっとたくさんの工程のなかで自分たちの責務を果たしている人たちがいることを忘れてはいけません。


かつて関西空港が機能不全に陥ったとき、貨物地区の復旧状況などに関する報道がほとんどなかったことは非常に悔しかったものです。

関西空港の物流は滑走路と橋だけで成り立っているわけではありません。

東京の物流も、道路と宅配だけではないのです。