卒業式のシーズンですね。

長年慣れ親しんだ環境に別れを告げ、次のステップへと旅立つ儀式、卒業。


キャプチャ


実はこの春、貿易と通関の世界でも、卒業を迎えるある出来事があります。


それは、中国の特恵受益国からの全面卒業です。


中国はこのほど、財務省により定められた特恵国からの全面卒業の要件を満たし、2019年4月1日より特恵国から卒業となります。
長年にわたり世界の工場として日本に対しても多くの調達物流を支えてきた中国ですが、ついにFormAでの一般特恵適用が出来なくなり、協定税率での課税がなされることとなります。
今回、中国と一緒にメキシコ、タイ、マレーシア、ブラジルが一緒に卒業することになっています。



そもそも特恵関税制度とは、先進国が開発途上国から輸入する際に関税を優遇(免除)し、開発途上国の発展を促す制度です。
優遇関税が適用される国は特恵受益国といい、原産地証明書(FormA)の提出により輸入通関時に関税の減免を行うことにより特恵受益国産の物品の価格競争力を向上させることが主な目的ですが、その卒業要件は、特に政治的な意図や複雑な判定基準があるわけでなく、下記のような比較的シンプルで客観的なものです。


1506 特恵関税の卒業及び適用除外措置について(カスタムスアンサー)

2.全面適用除外措置(全面卒業)

 我が国が特恵関税を供与している国(又は地域)のうち、その年度の前年までの3か年の世銀統計において、連続して①「高所得国」に該当した国(又は地域)又は②「高中所得国」に該当し、かつ、全世界の総輸出額に占める当該国の輸出額の割合が1%以上を満たした国(又は地域)については、その国(又は地域)への特恵関税の供与は行われない(すべての品目に対して特恵関税適用の対象から除外する)こととなります。

 全面卒業となった国(又は地域)が、その後に3か年の世銀統計において、連続して上記①又は②に分類されなくなった場合で、かつ、その国(又は地域)から希望があった場合には、その年の翌年度からその国(又は地域)に対して再び特恵関税が供与されます。


爆発的なEC購買力やインバウンド需要だけでなく、確かな技術力と工業生産力を持ちアメリカとガップリ四つのこの国ですが、意外や意外、まだ今年度までは特恵受益国だったわけですね。
それもやはりこの国のすそ野の広さの表れと言いますか、懐の深さと言いますか。


ともあれ、日本の調達元や消費者にとって特恵関税が適用されなくなることはコスト増につながる要因であることに間違いありません。
ますます地域や二国間の経済連携協定の重要性が高まっていく時代となりそうです。