汚れた廃プラ、政府が輸出規制へ バーゼル条約に提案


政府は、4月にスイスで開催されるバーゼル条約締結国会議で、相手国の同意なしに汚れた廃プラの輸出入を禁止する条項の加える提案をすることに決定しました。
プラスチックの環境・海洋汚染が世界的に問題視されるようになってから、日本主導で世界に対して環境保護の取り組みを率先して行う姿勢です。

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バーゼル条約は正式には「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約」といい、日本は1993年に加盟しています。
1970年から80年代にかけて先進国から開発途上国に向けて違法に廃棄物が輸出され、不法に投棄されたり輸入を拒否されたりした事例が多発したことを背景にこうした規制が厳しくなっていきました。
日本でも悪質な産廃業者などが不法にプラスチックや電化製品、紙などの廃棄物を輸出し、環境に悪影響を与えたり揚げ地で輸入できない貨物が滞留して船会社とトラブルを起こしたりという事例が多発した時代もありました。

一方でまっとうなビジネスとして日本から調達するリサイクル材料は開発途上国の業者にとって魅力的であったことも事実であり、筆者もかつて成田や北海道周辺の自動車解体工場からスクラップ部品をバングラデシュに輸出する際には、L/Cのなかに、バンニング時には指定された検査業者(COTECNAなど)の立ち合いと検査業者のシール(封印環)を必要とする条項が明記されているのを目にしたりもしていました。


日本で回収されたペットボトルなどの廃プラスチックも、かつては中国などに輸出されて洗浄され、再生原料として中国で製品になったりペレットになって日本に再度輸入されたりしていましたが、昨年中国が突如廃プラスチックの輸入をストップする決定を下して以降、日本だけでなく世界中の廃プラスチックの行き場所が一時なくなってしまう事態を招きました。

この状況を受けて、この約1年ほどの間に廃プラ物流は大きく流れを変えることになります。

選択肢としては、

1. 日本で処分もしくはリサイクル
2. 日本で資源化したものを中国などに原料として輸出
3. 紙や木材などの代替品に切り替え

などが考えられるわけですが、所詮経済活動の中で下される選択ですので、経済効率、つまりは収益性が最大の決定要因となります。

欧米のスタバでストローが紙製に変更になったことは記憶に新しい部分ですが、紙製にしても今度は森林資源の保護を叫ばれる可能性もあり、本当に環境にやさしいかどうかは検証が必要です。

また、原料としてのプラスチックの需要が中国ではいまだに高く、日本で回収した廃プラの一次処理を行い輸出できる状態に加工する中国系の業者が日本に進出している動きもあります。


環境問題というのは一つの尺度で語ることが難しく、様々な切り口によってそれぞれの言い分が相反することは避けられません。

石積みの回でも話しましたが、相関する複数の組織がうまく回っていくためには、そのサイクルの継続がお互いに利益を及ぼすことが重要です。

しかもその利益は地球レベルの利益でなく、せいぜい人の一生程度で体感できる利益であることが必要で、人間の性の難しさを感じざるを得ない部分ですね・・・

なお、輸出入に関わる廃プラは基本的に産業廃棄物のことを指し、家庭ごみの処理、リサイクルは自治体の責任において行われています。
地球環境は体感できずとも、少なくとも同じ町で廃棄物の処理にあたっている人たちが働きやすいよう、家庭のごみの出し方にだけでも配慮するようにしましょう。