宇宙はどの国の領空でもありませんので、国際物流には当てはまりませんが、日本のJAXAがまた素晴らしい実績を打ちたてたのでそれについて書こうと思います。


2018年9月23日にH-IIBロケット7号機によって打ち上げられたこうのとり7号機は、9月28日に無事ロボットアームにより把持され国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしました。

こうのとりとは、日本のJAXAにより開発・運用される宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle : HTV)のことで、一度に6トンもの物資をISSに輸送できる手段はいまのところ世界中にこうのとり以外にはありません。

今回もこうのとりは、アメリカや欧州製の実験用ラックや日本製リチウムイオンバッテリー、実験用超小型衛星などのほか、北海道の玉ねぎや宮城のパプリカ、岡山のシャインマスカットや愛媛、佐賀の温州ミカンなどの生鮮食料品を無事に輸送しました。


通常は輸送物資をISSに運び込んだあと、廃棄物資などを詰め込んで再度大気圏に突入し、燃え尽きて運用完了となるこうのとりですが、今回は特別な任務をおびていました。


それは、大気圏再突入するこうのとりから、実験試料を積んだ回収用カプセルを切り離し、洋上に着水させて資料を回収するという、宇宙から物を持ち帰る新たな試みの実証実験でした。

HTVcapsule


回収用カプセルは直径約80㎝と小型ながら、窒素ガスを噴出して姿勢を制御する機能を持っており、また内部の実験試料の保護のため断熱構造になっていました。


11月8日にISSから切り離されたこうのとり7号機は11月11日6時38分に大気圏に再突入して燃え尽きてしまいましたが、その前に切り離された回収用カプセルは無事太平洋に着水し、同日10時25分に船舶により回収されました。

実験用試料として封入されたたんぱく質の結晶は良好な状態を保っており、温度による変性もなく宇宙から物を持ち帰るという技術を見事に実証した結果となりました。


数々の苦難を乗り越えて小惑星イトカワのかけらを地球に持ち帰ったはやぶさの物語は日本に多くの感動を与えましたが、宇宙からのサンプルリターンは日本のお家芸と言えるようです。

いまはやぶさ2はまさに小惑星リュウグウの上空に到達し、サンプル回収のためのミッションを着々と進めていますが、将来、宇宙に物を運んで持ち帰ることを「物流」と呼ぶ日も来るのかもしれません。


kaishuu