貨物を輸出するときには税関に申告し、許可を得てから輸出します。
しかし、正しい輸出入者情報と物品、価格情報を申告すればどんな貨物をどこにでも輸出できるというわけではありません。

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世界を取り巻く環境問題の観点から規制される貨物もあれば(ワシントン条約)、日本が関係する政治・経済状況を鑑みて制限を受ける仕向け地や、海外のユーザーもあります。

武器そのものだけでなく、武器や軍用品に転用可能な部品や技術などが我々の国や国際社会を脅かす恐れのある国家や団体に渡ることを防ぐために、経済産業省は国際的な枠組みの中で輸出などの管理を行っています。

日本での管理制度には、リスト規制、キャッチオール規制、積替規制、仲介貿易取引規制がありますが、ここでは輸出貨物を取り扱う際に日常的に触れる機会の多い、リスト規制とキャッチオール規制について述べたいと思います。


リスト規制

リスト規制とは、輸出しようとする貨物が輸出貿易管理令別表1の1~15項の軍事転用可能な物品に該当する場合、輸出する仕向国や輸入者に関わらず事前に経済産業大臣の許可を得なくてはならないというものです。
この管理令別表は、輸出通関の現場ではよく別1(ベツイチ)などと呼ばれたりします。

該当しない貨物の場合でも、該当するかもしれないと思われる貨物の場合だと、該非判定書(パラメータシート)という、ベツイチ非該当である旨を証明する書類を添付したりします。
しかしこのパラメータシートはメーカーやそれに近い立場の会社が、商品の詳細な仕様に基づいて作成する書類ですので、個人や転売業者さんにはなかなか調達が難しいと言えるでしょう。

パラメータシートに代わる書類としては、輸出者が発行する非該当証明というかんたんな書類で輸出申告を切り抜ける場面が多いようです。

これは、輸出申告にあたって輸出者が書面で、

「この貨物は輸出貿易管理令別表1の1~15項に非該当です。ただし別表1の16項には該当します」

と宣言するものですが、本当に非該当であることを証明するというよりは、申告する通関業者が後から何かあったときの保険のような意味合いが強いような気がします。

なお、別表1の16項には該当、とありますが、これはキャッチオール規制の対象品目であることを意味します。
ほとんどの貨物はキャッチオール規制の対象品目ですから、セットの決まり文句のようなものです。

また、ベツイチの5項~13項と15項の一部に該当する物品には輸出許可を必要としない少額特例制度もありますが、キャッチオール規制には該当しないので注意が必要です。
詳しくは通関業者に尋ねてみるのがよいでしょう。


キャッチオール規制

リスト規制に該当しない物品であっても、輸出しようとする貨物が大量破壊兵器や通常兵器の開発、製造などに用いられる恐れがあると分かった場合は経済産業大臣への許可申請が必要です。(客観要件)
また、客観的にこうしたことが判明しなくても経済産業大臣から許可申請をすべき旨を通知される場合はやはり許可申請が必要となります。(インフォーム要件)


キャッチオール規制は、貨物の仕向国が輸出貿易管理令別表第3で規定される、いわゆるホワイト国の27か国である場合は規制の対象外となります。

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経済産業省のキャッチオール規制の輸出許可申請に係る手続きフロー図を見るとよくわかりますが、貨物の用途が軍事転用ではないとされる場合においても、ホワイト国以外の仕向け地に貨物を輸出しようとする場合、仕向国の輸入者までもリスト化されて規制されている場合もあります。

とくに、これだけ貨物や人の行き来のあるおとなり中国や香港でも、キャッチオール規制対象国であり、外国ユーザーリストにも会社名が列挙してあることは知っておくべきです。



古くはソビエト連邦崩壊前、冷戦時には対共産圏輸出統制委員会(COCOM)が設置され、いまよりも厳しい輸出貿易管理がなされていました。
COCOMはソ連崩壊とともに1994年に解散していますが、それ以後も日本はアメリカが主導する政治、経済の連携関係の中で貿易を行っています。

国際物流の現場とは、新聞やニュースで報じられる国際情勢の動向がダイレクトに影響される、まさに日本における対外政策の最前線なのです。