特殊な航空輸送と言えばやはり軍隊の物資輸送において行われる戦術輸送や戦略輸送。
一見マンガの世界の無茶を押し通す輸送に思えますが、軍隊ほどマニュアルと規律に制約された組織はありません。


今日はその中で筆者が「これは凄い」と思った輸送を二つ紹介します。


LAPES - Low Altitude Parachute Extraction System 低高度パラシュート抽出システム

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これは、超低空で飛行する輸送機の後部カーゴドアを開放し、機内で貨物に装着されたパラシュートを開き、パラシュートに引きずられる形でパレットやクッション材などで保護した貨物(時には装甲車など)を投下する仕組みです。

軍事輸送においても、通常は飛行場に着陸して輸送機から貨物を降ろすことが望ましいわけですが、この方法は飛行場の無い前線や、着陸して貨物を降ろす時間的な猶予や安全が確保されていない状況に選択されます。

また、パイロットにとっても、超低空、超低速で不安定な飛行状態のうえ、撃墜のリスクもある戦場で行われる作戦だけにその消耗度は計り知れません。

このような作戦しか選択肢がない局面、我々にはどれほどのことか知るべくもありません。


HALO - High Altitude Low Opening 高高度降下低高度開傘

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一方こちらは、パラシュート降下作戦に用いられる戦術のひとつで、地上から視認できない高高度(約10000メートル程度)から降下し、300メートルほどの低高度で開傘、地上に部隊を展開するというもの。

※ゴジラの1シーンにも描写がありましたね。

高度10000メートルは気温-50度、気圧も地上の四分の一ほどしかありません。
酸素ボンベなどの特殊装備を装着しているとはいえ、生身の体で降下し、目の前に迫る地面すれすれに開傘するという、常人にはなしえない戦術です。

スカイダイビングをすれば空気抵抗により時速300㎞程度の終端速度に至るとはいえ、秒速約80m、3秒ほどで地上に到達する高度で開傘することになります。


こちらも、いかに発見のリスクを少なく、短い時間で部隊を展開することができるゆえ、制空権や地上支援のない前線や離島奪還などに用いられると言われています。

そして、こちらもLAPESと同様、安定した飛行速度と飛行姿勢を保つパイロットと輸送部隊の技量が重要であることは言うまでもありません。


一見ムチャクチャに見える作戦でも、その裏にはち密に計算された理論と数多くの訓練に裏打ちされた実績、そしてその理論を実践する高いモチベーションの人間がいて初めて実現されます。

ロジスティクスとは兵站が語源といいます。
軍事を一重に肯定するつもりはありませんが、現場の統率と洗練されたマニュアルなど、我々が日常で参考にすべき教えがあるようにも思えます。