港の岸壁にそびえたつ、赤と白の巨大な構造物。
そのたたずまいからキリンとも呼ばれるコンテナ荷役の主役、ガントリークレーンです。

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コンテナが海上輸送で使用されるようになった当初、コンテナ船への積み降ろしは船に搭載されたクレーン(デリッククレーン)で行われていました。
しかし、コンテナ船が大型化し、ひとつの寄港地で積み降ろすコンテナの数が増えてくるにつれ、荷役のスピード向上が課題となりました。
そこで考案されたのがコンテナ専用のガントリークレーンです。

昔から港湾には門型のクレーンが使われており、これもガントリークレーンと呼びましたが、もっぱらコンテナ専用の荷役を行うガントリークレーンのインフラ拡大は、コンテナ船の定期航路拡大と、その輸送効率の恩恵にあずかる荷主の拡大につながりました。


ガントリークレーンはガーダーと呼ばれる横行桁と高脚、動力室とオペレータ室で構成されており、岸壁に固縛されたコンテナ船にコンテナを積み降ろしします。
クレーンの動きとしては、コンテナ船に並行したレールをコンテナ自体が横移動し、ガーダーをオペレータ室が前後に移動することで、UFOキャッチャーのように船上の自由な場所にスプレッダーと呼ばれる、コンテナを吊るための吊り具を降ろします。

ガンマンと呼ばれるガントリークレーンのオペレータは、デッキマンと呼ばれる地上作業員と無線で交信しながら、高いときには50メートルもの下方にある目的地に向かって目視でスプレッダーを降ろしていきます。
目標となる、コンテナの吊り具が入るための穴(キャスティング)は約10㎝、ここに安全に、最短の時間で吊り具を降ろし、実に1時間で30本以上のコンテナの積み降ろしを行います。

目視で真下にある目標物を視認するため、オペレータ室の床はガラス張りになっており、スプレッダーと一緒になってオペレータ室は移動します。
また、風のあるときや荷物を吊ったときなど、大きく傾いたり揺れたりすると言いますので、だれにでもできる仕事ではありません。

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また、巻き上げながら下がったり、降ろしながら前進したりと、作業を効率的に短時間で行えるような動作をしており、風などによる揺れも考慮しながらちょっとした操作でぴたりとコンテナを目標に静止させる動作など、まるで日本舞踊の名手が振りかざした扇子をピタリと止めるさまをみるようです。


船会社の人にも聞きましたが、日本の港湾のガンマンのレベルは相当高いと言います。
今日も安全に、船のスケジュールを守りながら荷物の積み降ろしが行われているのは、人の手による安全への配慮と経験、技術に裏打ちされた現場のチームの方々の努力のおかげです。