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海外から到着する大型の貨物船やコンテナ船には、当然ながら船長をはじめ乗務員はみな外国人です。
東京港や横浜港に入港するコンテナ船のなかには、初めて日本にやってくる船舶や船長もいらっしゃるかもしれません。


海図や信号といった一般的な情報だけでは、複雑に入り組んだ潮流や風、波の影響、天候の急変などに対応し、大型の船舶を安全に接岸させることはできません。
そこで、定められた水域ごとに、船舶航行の経験を持ち、専門的な知識とその水域の状況に精通した専門家が船舶に同乗し、船長を補佐して大型の船舶を安全に目的地まで導きます。
こうした職務に当たる、特定の水域の航行のための専門家を「水先案内人」といいます。


水先案内人は法制上の正式な呼称を「水先人」といい、通称パイロットとも呼ばれます。
水先人になるためには3000トン以上の外航船の船長の経験を3年以上積む必要があり、そもそも受験資格を得ること自体が非常に狭き門となります。
また、水先人の資格は水域ごとに定められており、しかも希望する水域の資格試験に合格しても、その水域の水先人には定員があり、いつでも水先業務を行えるというわけではありません。

業務を行う水先人も、毎年の健康診断と5年ごとの免許更新をクリアする必要があり、人知れず活躍する相当特殊な職業と言えるでしょう。


原則的には水域を航行する際に水先人を依頼するかどうかは船長の判断に委ねられていますが、船舶の航行が多かったり、潮流や気象状況が複雑で安全航行が厳しい水域においては、水先人の乗船が義務付けられている場合があります。

このような水域を「強制水先区」といい、日本では下記の水域が強制水先区として定められています。



キャプチャ



このように、大型船の入港と接岸のためには水先人が欠かせない存在となっており、接岸の際にはタグボートや岸壁の作業員に直接無線で指示を出しながら、衝突事故が起こらないよう細心の注意が払われています。


関係ありませんが、複雑に入り組んだ岸壁に大きな船の機動をフル活用して接岸する風景をみて楽しむ接岸マニアという人たちが世の中にはいらっしゃるようです。

船長たちの神業テクニックも見事なものですが、あまりにもニッチな分野のマニアの存在には驚きを隠せません。