NACCSの包装種類コードを数えてみました。
毎日目にするCT(Carton)や PP(Pallet) から天然ガスや石油用のVG,VLまで、全部で75種類もありました。


普段業務に携わっていても、実際に目にすることのできる梱包はそのうちの1割くらいでしょう。

しかし、一般的な梱包形態においても、航空機や船舶に搭載して遠く離れた海外まで無事に貨物を届けるためには、それぞれの貨物に適した最低限の梱包の知識と輸送における環境について知っておかなくてはなりません。

キャプチャ


まず航空機での輸送ですが、だいたい国際線の飛行機は高度10000メートルくらいを飛行します。
当然機外は低温低圧の極限環境ですが、航空機の貨物室は0.8気圧程度に与圧されており、湿度20%、温度もだいたい‐6℃くらいまでしか下がりません。
また、輸送時間も長くてせいぜい十数時間くらいですので、ある程度貨物にとっても快適な環境と言えそうです。

しかし、航空機の輸送において重要なのは、傾斜と運航中にかかる荷重(G-Factor)への対策です。
とくに荷重については、そもそも限られたスペースに効率よく貨物を搭載するため段積みが行われることに加え、気流の急激な変化や悪天候での飛行や離着陸では最大で3G程度の荷重がかかると考えられています。

ULDへの積みつけはおおむねプロが行うので問題ないですが、荷主としては梱包内の貨物の捕縛、パレット組みであればラップやバンド掛けを十分に行い、荷崩れを防いで荷重に耐える梱包を施すことが必要です。


海上輸送の場合、多くの貨物はコンテナに積まれて輸送されます。

海上輸送の場合でも、傾斜に対する対策は重要です。
最大30度程度までの大きな横揺れ(ローリング)に対しての荷崩れ防止対策は必要です。

しかし海上輸送において最も注意を払うべきこと、それは温度変化と湿度(結露)対策です。

海上輸送はアジアでも1~2週間、ヨーロッパ航路などでは1か月以上の航海日数を要することも珍しくありません。
その間、当たり前ですが必ず昼と夜を繰り返しながら海の上をコンテナ船は航海します。


そこで発生するのが昼夜の温度差。


筆者が以前確認したデータロガーでは、赤道付近を航行する航路の場合夜間の最低温度が5度に対して昼間の最高温度が55度くらいにまで達していました。

単純に高温に対する対策も必要ですが、海上の湿った空気がコンテナ内に流入すると、夜間は必ずコンテナ内において猛烈な結露が発生します。

段ボール箱はしっとり湿ってくたくたになり、昼間はまた乾き、をくりかえし、だんだん積み上げた段ボールはくにゃ~と倒れこんできます。
また、塩分を含んだ海上の湿気を嫌う精密機械や錆びやすい製品などには致命的な損傷を与えかねません。


こうした現象を防ぐため、定温輸送を可能にするリーファーコンテナを使用する選択肢もありますが、やはりリーファーFCLの運賃は高額です。


そこで湿気を嫌う製品の海上輸送に必ずと言っていいほど施される梱包がバリア梱包です。


バリア梱包とは、機械などの製品をビニールのシートで覆い、中に乾燥材を封入させて空気を抜いた真空状態にしたものです。
通常はこれをケースやスキッド梱包し、船積みします。


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LCLの場合はやはりほかの貨物と混載されるため段積み対策も必要ですが、バリア梱包を施すことで通常のドライコンテナでの海上輸送を安全に行えるようになります。


航空輸送、海上輸送、それぞれに適した梱包があり、業界には梱包のプロフェッショナルも存在します。

梱包による容積増加を最低限に抑えながら、輸送モードに応じた最適な梱包を施してくれます。
梱包材の燻蒸はもとより、IATAやJICAのような外部機関によって定められた梱包やマーキングの知識を持ったプロたちが素晴らしい仕事をしてくれます。


費用をある程度かけてでも、十分な梱包を施して輸出を行うことこそが、長い目で見れば破損品の代替輸送や納期遅れを防ぐ意味においても、コスト削減とトランジットタイムを短縮することに貢献するといっても過言ではありません。