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また台風24号が近づいてきていますね。
現在の進路予想図を見ると、また日本列島を縦断するコースとなるようです。
だいたい日曜日の夜9時ごろに高知沖でしょうか。

なるべく威力が弱まって、なるべく早い速度で、影響少なく通り過ぎてほしいものです。


台風が来ると、我々の業界はどのような影響を受けるのでしょうか。


航空機の場合、出発前の打ち合わせ(ブリーフィング)で到着地やコースの気象情報を検証し、出発するかどうかを機長が決定します。

国内線の場合、フライト時間が比較的短いわけですから、台風の影響が想定される時点ですでに台風は接近しており、フライトキャンセルになる場合が多いと言われています。

国際線は相当な時間をかけて飛んできているわけなので、国内線がキャンセルしている状況でも上空で待機しながらほんのちょっとした隙に着陸したりします。
場合によってはダイバージョンもありますが、国際線のほうが運行予定の変更の影響が大きく、選択肢が少ない状況が比較的多いと言えるのかもしれません。

また、ひとえに強風と言っても、滑走路に対して追い風や向かい風の場合は、少しくらい強風のなかでも離発着は可能です。
しかし、横風(斜めの風の場合は横風に換算)が強いときは航空機にとって非常に危険です。
横風にあおられると長い翼が地面に設置し、大事故につながる恐れがあるからです。


航空会社や使用機材、パイロットの保有資格によっても離発着中止かどうかの基準は異なります。
基本的には新しい機材のほうが横風に強いとされていますが(ボーイング777の横風制限が37ノットなのに対し767の場合は29ノット)、状況に応じて判断は異なります。

同じ時間帯のフライトだったとしても、あそこは飛ぶけどうちのは飛ばない、という状況はこうして生まれています。



一方、船舶が台風から受ける影響も非常に大きいものがあります。



船舶の場合は、航行海域の風の影響もそうですが、うねりによる影響も非常に大きく、また航行速度は台風とそれほど変わらないため、いったん暴風域、強風域に入ってしまうと退避にも時間がかかるというリスクがあります。

したがって、事前の気象情報を十分に調査し、慎重に航行計画を立てる必要があります。

我々の良く知る気象庁の台風情報のほかに、気象庁には海上警報というページもあります。
ここには我々が普段あまり目にすることのない、うねり警報や着氷警報といった、航行の安全のために必要な情報が表示されています。

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また、気象マニアのかた(?)は米軍の気象情報サイトをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
(右のほうの TC Warning Graphic というところをクリックしてみてください)


コンテナ船の場合はヤードがガントリークレーンの荷役をストップしたり、普段4段積みのコンテナを3段に降ろしたりして強風による事故を防ぐ処置を行います。

台風による警戒態勢が発令されると、港内に停泊中の大型船は、港外に退避しなくてはなりません。
小型船の場合は係留を強化することで船舶を固定して台風の通過を待ちますが、大型船の場合、強風にあおられて船舶や護岸、橋脚などに被害を及ぼす恐れがあるからです。
コンテナ船など、横からの投影図を見るとはっきり言ってついたてのようなものです。
それでも、ただ積み上げてあるだけのように見える船上のコンテナも、実は角が落としてあったり真ん中が高く積んであったりします。
これは風の影響を軽減するためにあえてそのような積み方をされています。


どちらにしても、船は格納庫にしまえるわけではないですからね。


今回、関空連絡橋でも恐ろしい事故が発生してしまいました。
本来は港外に退避して安全な錨泊地で台風の通過を待つべきところ、空荷となり喫水も上がったタンカーが思いもよらぬ風の影響をうけ、恐ろしい走錨事故を起こしたのは記憶に新しいところです。
直前まで荷役を行っていたため、安全な港外に退避する猶予がなかったとの話もあるようです。
いずれ、真実が明らかになるときも来るのでしょう。


いずれにせよ我々にできることは、なるべく被害を事前予測し、台風の直接被害だけでなく、荷動きを想定した事前、事後の処理に対して十分な備えをしておくことでしょう。

自然の猛威には逆らえませんが、少しでも事後のことを想定して一つでも用意が出来ているかどうかで後処理はずいぶん楽になるものです。

大げさに考えて用意しすぎるくらいでも、何も起こらなければ儲けもの。
何もなくて当たり前、本当のファインプレーは誰も気づかないものです。

そして自然の猛威に対しては・・・本当に神に祈る思いです。